四国お遍路の帰り、来島海峡大橋が展望できる糸山公園に車を止めた。今夜はここが私の宿泊場所だ。辺りが暗くなり、ライトアップされた来島大橋がはっきり見えるようになった。幻想的な風景だ。その風景を逃すまいと、カメラマンたちが盛んにシャッターを切っている。ここは絶景ポイントなのだ。賑わいはライトアップが終了する午後9時まで続いた。
やがて、人たちが去り、辺りは静かな闇に包まれた。私も寝袋にもぐりこんで深い眠りに落ちていった。
午前4時過ぎ、車のエンジン音で目が覚めた。窓の外に三脚を担いだ人の姿が見える。夜明けの来島海峡を撮りに来たのだろう。しだいに辺りは明るくなり、向かい側の島の空が赤くなり始めた。太陽があの辺りから昇るのだろう。5人ほどの人がカメラを構え、日の出の瞬間を狙っている。
やがて赤い太陽が顔を出した。橋も海もオレンジ色に輝き、私にはとても美しい風景に見えたのだが、シャッターを切ったカメラマンはいなかった。写真家が狙う日の出は、ありきたりの日の出はないようだ。
クリックすると大きくなります