北陸路の旅
11月20日(木) 敦賀~三方五湖~高浜 午前5時起床。まだ辺りは真っ暗だ。霧雨のような雨が降っていた。釣り場所に人影は見えない。寝床を片付け、座席を起こし、車内を掃除する。昨夜、旅人を刺した蚊はどこに隠れているのだろうか。隅々まで探したが見つからなかった。
午前6時、釣り場所に人影が見える。雨が降っていても、遠くからやって来た釣り人は、魚を釣らなければ目的が達成できない。朝の散歩を兼ねて見物に行く。親父さんがアジのサビキ釣りで挑戦していた。「アジは掛からんわ」と親父さんはぼやいていた。しばらくすると夫婦連れがやって来た。この人たちもアジをねらいに来たようだった。「昨日の夕方、サビキでイワシがたくさん釣れていました」と教えてあげる。「じゃあ私はそうするかな」と奥さんがサビキ釣りの仕掛けを用意し始めた。釣りに来る時は、その場に応じて釣る魚に対応できるよう、釣道具もいろいろ持って来ているのだと感心した。魚釣りは男しかやらなかったが、近年になって女性の中にも急速に広がっているようだ。
車に戻る。旅人は、暑いコーヒーが飲みたくなり、荷物が入った箱の中からガスレンジを引っ張り出した。登山の時に持って行く携帯用のガスレンジで、旅人が北海道へ歩きに行った時に購入したものだった。小さな鍋に水を入れ、ボンベに点火した。今回の旅行では初めて使う。コンビニ弁当ばかりでなく、これで食事も作るようにすれば費用はもっと安くなる。そのために持ってきたものなのだ。しばらくして湯が沸いた。そして、持って来たポットに湯を入れた。今日からは自炊も始めようと旅人は思った。熱いコーヒーは美味しかった。
釣り桟橋のトイレを使用した。和式と様式の2種類があり、中は清潔でトイレットペーパーもきちんと設置してあった。ここなら家族連れでやって来ても安心して釣りが楽しめる所だと思った。問題は魚が釣れるかどうかということだ。出発する前に、もう一度釣りの状況を見に出掛けた。釣人の数は増えていた。大物ねらいの人か多かったが、釣人のバケツの中を覗いたが魚は釣れていなかった。しかし、ここは大物が釣れそうな雰囲気のする場所だと思った。

午前7時発車。今日は敦賀から若狭湾沿岸を走る予定だ。まずは、近くにある敦賀港へ向けて車を走らせる。コンビニが見つかれば朝ご飯にする予定だ。しばらく走ると賑やかな通りになり、敦賀港の中央桟橋に出た。桟橋の前は広い公園になり、芝生も整備され、お金がしっかり使ってあるという感じだ。今回の旅でも、行く先々で新しい施設があることに驚いている旅人だ。敦賀でも釣り桟橋で驚いたが、この中央桟橋の前にある公園もそうだ。日本中どこへ行っても、莫大な資金を投入して、公共施設の整備を行ったということが分かる。例外の自治体はない。裏を返せば、日本中が借金地獄になってしまったのだが、子どもたちや孫たちに喜ばれる施設を大人たちが一杯作ってあげたということなのだろうか。問題は、この施設をこれからも維持していけるかということだ。大人たちの責任は重大である。

コンビニも見つかり、おにぎりと新聞とインスタント味噌汁を買った。少し行った所に「気比の松原」という景勝地があるというので、そこで朝食にすることにした。降っていた雨も止んだようだ。道路標識に従って車を走らせると、松林が見えて来た。ここが「気比の松原」という所らしい。
駐車場に車を停め、辺りを散策する。海岸線に沿って松林が1kmほど続いていて、松林の中には遊歩道も設けられている。散歩している人の姿があちらこちらに見えた。松林の前にはきれいな砂浜が広がっている。夏は海水浴場になるらしい。ベンチに座って朝食にした。ポットからお湯を注ぎ、味噌汁を作った。おにぎりと味噌汁という簡単な朝ご飯だったが、熱い味噌汁が美味しかった。バスが停まり、団体さんがぞろぞろ降りて来た。松林の前でポーズをとり、記念撮影をしていた。ここは敦賀では有名な景勝地になっているようだ。

福井県にはたくさんの原子力発電所がある。敦賀市や隣の美浜市にも原子力発電所がある。ここからすぐ近くの敦賀半島の突端に敦賀原子力発電所があるので、旅人は見学することにした。半島の曲がりくねった山道を20分ほど走ると、敦賀原子力発電所の正面に着いた。高い塀が何重にも巡らされた奥に円筒形の形をした建物が見える。原子炉のようだ。見学館があるというので、受付に行く。「すいません、原子力発電所を見学したいのですが」受付の男性に申し出ると「いや、ここは発電所なので見学できません。見学館がここから少し離れた丘の上にありますから、そちらへ行ってください」とあわてた様子でヘルメットを被った男性が外へ出てきた。アフガン戦争、イラク戦争と戦争が激しくなり、日本もテロ攻撃の対象にされるようになってから警戒が厳重になっているとのことだ。浮浪者のような旅人が訪れたのだから、受付の人が慌てるのも無理もないことである。「見学館はこの先ですから」受付の男性は早く行ってほしいという様子だった。旅人が男性と話している間にも、工場へやって来た車がチェックを受けて中へ入って行った。
見学館はすぐ近くにあった。駐車場に車を停め、玄関から中へ入ると、白衣を着た大勢の人たちが、受付の女性に案内されて2階へ上がって行くところだった。原子力発電所では白衣を着ることが安全につながっているのだろうか。「見学したいのですが」と言うと「1階が見学館になっています。コースに沿って見学してください」と素っ気ない返事が返って来た。
見学順路に従って見て行く。原子力発電の仕組みや安全性について説明されている。しかし、現実には原子力発電については、安全性を巡って激しい論議が続いている。特にプルトニウムを使うプルサーマル計画の安全性については疑問視する声が多い。「本当にプルトニウムを人間が制御できるのか。取り返しのつかない事故が起こるのではないのか」と心配する科学者の声にどう答えるのか。敦賀ではプルトニウムによる発電をしているから、もっと詳しい説明がいるのではないかと思う。つい最近、この敦賀原子力発電所でナトリウム漏れの事故が発生しているのだ。それなのに、実際に起きた原子力事故や疑問視する声については全く紹介がなかった。「原子力発電は安全だ。原子力発電は素晴らしい。原子力発電はもっと必要だ」ということを一方的に宣伝する見学館だと旅人は思った。
見学を終え、庭に出た。庭のすぐ横に研修室があり、そこで白衣を着た人たちが熱心に講義を受けているのが見えた。さっき女性に案内されて行った人たちのようだ。「へんな格好をした親父が庭をうろうろしているな」と彼等には見えているのだろう。庭から敦賀原子力発電所がはっきりと見えた。近代科学の粋を集めた原子力発電所。絶対に事故があってはならない施設だが、テロ攻撃という不安も増し、厳しい時代になった。早く安全なエネルギーが開発されることを願って発電所を後にした。

敦賀半島を横断した西側には美浜原子力発電所がある。近くまで車を走らせた。敦賀原子力発電所と同じような形をした原子炉が見えた。福井県には、この他に大飯原子力発電所と高浜原子力発電所がある。本当に事故が起こらないことを願う。
美浜町から三方五湖へ向かう。雨が降ったり止んだりのいやな天気である。「天気がよければ美しい湖が見えるのだろうが、この分だと霧雨にかすんでいるかもしれないなあ」と思いながら車を走らせる。もうすぐ三方五湖という所で、小さな川を渡った。橋の上で釣りをしている2人の親父さんがいる。釣りの成果はどうかなと野次馬心が起きた。車を停め、覗きに行く。こういうことは気ままな旅だからできるのだが・・・。
「釣れますか」と声を掛けると同時に、1人の親父さんの竿がしなり、結構大きな魚が上がってきた。アイナメだった。「よく釣れますよ」ともう1人の親父さんがクーラーボックスの中を見せてくれた。大きなアイナメが10匹ほど入っていた。見ている間にまたアイナメが釣れた。本当によく釣れるのだ。旅人も釣りがしたくなり、近くの釣具店を教えてもらい、ノコノコ餌を買いに出掛けたのだ。ところがである。教えてもらった釣具店は休業だったのだ。道行く人に聞いても、釣具店はこの辺りではそこ一軒しかないようだった。魚釣りをあきらめざるを得なかった旅人は、大魚を逃した時の気持ちになっていた。

三方五湖は「レインボーライン」という有料道路を走らないと展望できない。ゲートで1000円を払って有料道路へ入った。道はぐんぐん高度を増し、やがて眼下に海岸線や湖が広がり始めた。絵になる風景だった。
しばらく走ると展望台だった。霧雨が降る中、見晴台に立つ。眼下に三方五湖が広がっていた。空が騒がしいので見上げると、何百というカラスが群れを作って飛んでいるのだ。ギャーギャーと泣き叫んでいる。「何事が起こったのだろう?」不思議に思いながら、じっとカラスの群れを見ていた。ようやく、その原因が分かった。薄茶色でハトほどの大きさの鳥をカラスたちが追いかけているのだった。それはハトではなく、ハヤブサかトビの子どものような感じだった。どうしてこんなにたくさんのカラスたちが1羽の鳥を追いかけているのか分からないが、幼鳥は必死になって大空を逃げ回っているのだった。幼鳥を助けようにも旅人には為すすべもない。ただじっと起きていることを見ているだけだった。

その時である。今まで大空を逃げ回っていた幼鳥は、木の茂みの方へ方向転換した。そして、木にぶつかりそうになりながらも茂みの奥へ身を隠したのだ。カラスたちは幼鳥を見失い、ギャーギャーと泣き叫びながら、しばらくその辺りを探し回っていたが、やがてあきらめて飛び去って行った。無事、幼鳥がカラスたちの追跡から逃れることができたのだった。それにしても、カラスの大集団が1羽の鳥を追いかけるという信じられないことがあるのだ。ただ、ただ驚いた旅人だった。雨が強くなり、車へ戻った。
三方五湖から小浜に向けて車を走らせる。午後1時、JR小浜線に沿った国道27号線を走っている。そろそろ昼食にしなくてはいけない。国道脇にあるコンビニを見つけて停車した。オニギリを買う。ポットから朝沸かしたお湯を注ぎインスタント味噌汁を作る。少し温度が低くなっているが飲める。あっという間に昼食を終えた。
コンビニが全国的に広がり出したのはまだ歴史が浅い。コンビニは、24時間営業の小さな商店という感じだったが、最近は、売る商品も豊富になり、生活のする中でコンビニがないと困るというまでになってきた。特に旅をしているものにとっては、大切な存在になっている。国道沿いのコンビニは、旅する人が利用する機会が増えたこともあり、トイレの使用やごみの処理、お湯の提供など、以前にも増して利用し易くなった。1級国道沿いにあるコンビニは駐車場が広い所もあり、そこにはトラックが何台も停車している。公共の「道の駅」に負けない、民間の「道の駅」という役割を担うまでになっている。ここも、そのようなコンビニだった。
午後2時再び走り出す。雨は完全に上がったようだ。小浜町に入る。ここは、旅人の友人の実家がある所だ。その友人は名古屋に住んでいる。旅人が、30年前に名古屋で結婚生活を始めた時に、すぐ隣に住んでいたのが友人だ。それ以来ずっと世話になり、旅人が教員をやめ、富山に引越してからも、旅人のことを心配して電話や手紙をくれる。旅人にとって大切な友人だ。友人が育った小浜町を走っていた。車の中から見る小浜町はのどかな田園風景が続いていた。しばらく走ると美しい海も見えて来た。山と山に囲まれ、美しい小浜湾に面した小さな町だった。「実家へ帰るのも一仕事よ」と友人がよく言っていたが、ここからだと、京都が1番近い都会なのだろう。名古屋からは遠い所だった。友人の言っている意味がよく分かった。やがて友人から「小浜はすてきな町だったでしょう!」という手紙が届くのではないだろうか。
車は海岸沿いを走っている。海は波もなく穏やかだった。「今から釣りをしようか」と旅人は思った。旅人がそんな気持ちになったのは、三方五湖で大魚を逃がしたのがよほど悔しかったのだろう。釣具店の幟を見つけると、車を停めた。小さな釣具店だった。「ごめんください」声を掛けると奥から親父さんが出て来た。「この辺りで魚がよく釣れる所がありますか」と釣具店の親父さんに尋ねた。「そうだねえ。この先の橋を渡った所の堤防でみなさんよく釣っています。今だと、アジとかキスとかスズキとかが狙えます」親父さんは親切に教えてくれた。旅人はキスを釣ることに決め、餌はアオムシにした。
教えてもらった釣り場に着いた。釣人が1人竿を延ばしていた。「何か釣れますか」とメガネの親父さんに声を掛けた。「ポツポツアタリがあるねえ。サヨリが少し釣れたかな」と親父さんは穏やかな声で答えた。「キスを釣ろうと思っているのですが。釣れますかねえ」と旅人が言うと、「釣れるんじゃないのかな。とにかく竿をじっとしておかないで、シャクルといいよ。そのままにしておくと毛虫やヒトデが釣れるからね」と面白いことを言った。「毛虫?」旅人は聞き間違えたようだ。投げ竿の準備を終わり、アオムシを付けて釣り始めた。しばらくして小さなアタリがあった。リールを巻くと大きなハゼが上がって来た。「ハゼが釣れるのですか」とびっくりしていると、「まだ本格的な季節じゃあないけど、ハゼもよく釣れるよ」と親父さんが笑っていた。しばらくして、再びアタリがあり、今度は、ゼンメイが釣れた。それからもハゼやゼンメイがポツポツと釣れた。セイゴもヒットした。五目釣りの雰囲気だった。本命のキスは釣れないが、とにかく魚が釣れるということは気分がいい。釣りは、魚が釣れなくてはいけないと旅人は思った。
何かおかしな形をした物が針に引っ掛かって上がって来た。ゴミかなと思っていたが、モゾモゾ動いている。15cmほどの大きさで毛虫そっくりの形をした気持ちの悪いものだった。旅人は初めて見るものだった。「何ですか、これは」メガネの親父さんに動くものを見せた。「それが、毛虫ですよ。正式名はどういうのか知りませんが、この辺りでは毛虫と呼んでいます。よく釣れるのです。」親父さんは笑っていた。「触って大丈夫ですか。」と聞くと、親父さんはうなずいている。旅人は恐る恐る毛虫に触り、針から外した。「毛虫」と聞いた時に、聞き間違いかと思ったのだが、本当に毛虫がいたのだ。気持ちの悪い生き物だった。しばらくして、今度はヒトデが釣れた。「毛虫やヒトデが釣れるからね」と初めに親父さんが言った通りになっていた。
時刻は午後4時、少し薄暗くなり始めた。「この辺りに道の駅はありますか」旅人はメガネの親父さんに聞いた。「ありますよ。ここから見えますよ。ほら、あのチカチカ光っている所。あそこが道の駅です。温泉もあるから、私も帰りに入って行こうと思っているのです」親父さんが教えてくれた。宿泊に絶好の場所が、すぐ近くにあるのだ。しかも、温泉付きとは素晴らしい。旅人は、そこを今夜の寝場所にすることに決め、もう少し釣りを続けることにした。
そこへ釣人が1人やって来た。髭を生やした青年だった。青年は車からリール竿を取り出し、サビキ釣りの仕掛けを作っていた。「何を釣りに来たのですか」と旅人が聞くと、「ここは夕方から夜にかけてアジがよく釣れるのです。それを釣りに来ました。」と青年はいやな顔もせずに話してくれる。青年は、リール竿を5本並べ、餌のアミを入れた大きなバケツ、それから水面を照らすライトまで準備していた。本格的な魚釣りだ。青年の準備が終わったころ、メガネの親父さんは竿を納めて帰って行った。旅人も釣った魚を放し、釣りを終えることにした。
あたりが一層暗くなり、遠くの明かりがはっきり見え出した頃、青年はライトに明かりを灯した。竿が並んでいる辺りが明るく照らし出されている。しばらくして竿に当たりが出始めた。アジが釣れ出したのだ。15cmほどの型のいいアジだった。やがて、次から次へと針にアジが掛かり出した。竿が5本もあるので青年は魚を取り込むのに忙しい。アジを針から外し、餌籠にアミを入れ、再び仕掛けを投げ入れる。流れ作業のような動作が続く。そして、瞬く間にアジがバケツ一杯になった。「何匹くらい釣る予定なの」と青年に聞くと、「500匹から1000匹かな」と驚くような数字が返って来た。しかし、この調子なら1時間もあれば達成できそうに思えた。「食べるのが大変ですね」と言うと、「その通りだね。でも近所にも配るからいいかなあ」と青年は嬉しそうな顔をしていた。大量にアジを釣るにはそれなりに工夫しないといけないのだろうが、すごい釣人がいるのだ。
メガネの親父さんに教えてもらった「道の駅」は「高浜シーサイト」という名前だった。広い駐車場、売店、レストラン、それに露天風呂まであるという素晴らしい施設である。夕食の材料は近くのコンビニで仕入れた。弁当と野菜の煮物と焼酎を買った。まずは、旅の汗を流しに露天風呂へ出掛けた。放浪の旅に出ても毎日風呂に入れるとは幸せである。しかも、温泉なのだから豪華なのだ。
ここの入浴方法は少し変わっていた。バーコード付きのカードですべて行うシステムだった。慣れない旅人は受付の女性にいろいろ教えてもらうことになった。驚いたのは、風呂の中の衣服を入れるロッカーまで、カードが鍵になっていることだった。受付の若い女性は臆することもなく、男性の更衣室の中まで入ってきて親切に利用方法を教えてくれたのである。隣では、裸の男性が堂々とオープンだったのだ。きっと、このシステムではトラブルが多いから、そんなことかまっちゃいられないのだろう。やはり、誰もが分かる入浴方法に改善した方がいいのではないだろうか。
風呂は快適だった。特に露天風呂は面白かった。カモメが1羽、露天風呂の脇をヨチヨチ歩いていたのだ。迷い込んだのだろうが、垣根が高いし、松の木が邪魔して飛び上がるのにも、飛び上がれないのだ。カモメと一緒に入った露天風呂は情緒があった。

風呂から出て、休憩室へ行った。入口に迫力のある大きな油絵が掲示してある。荒れた海で網を引く漁師たちを描いたものだった。男たちの気迫が伝わってくる絵だった。こういう絵が描けるようにならなくてはいけないと旅人は思った。
薄明かりの下で、いつものように夕ご飯を食べた。旅に出て3日目の夜になった。順調に日本海を南へ向かって走っているように思った。明日は、舞鶴から天橋立へ行く計画だ。北陸からいよいよ山陰に入る。酔いがまわり、眠気が急速に襲ってきた。旅人は、寝床を急いで作り、寝袋に潜り込んだ。
夜中、再び猛烈な痒さに目を覚ました。再び、蚊に手の甲を刺されたのだ。昨夜旅人を襲った蚊が車内のどこかに潜んでいたのだ。薬箱を探し出し、ムヒを塗った。しばらくして耳元で「ブーン」という羽音がする。パチン!憎き蚊を退治したようだった。窓の外を見ると、薄明かりに、たくさんのトラックが駐車しているのが見える。自動車の数も多い。やはりここは最高の「道の駅」のようだ。その後なかなか寝付かれない。今夜は焼酎を少し飲み過ぎたようだった。