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水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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福原伸二作「かさでら物語」 その1 

福原伸二さんが残してくれた、笠寺にまつわる逸話「かさでら物語」をシリーズでご紹介します。

【その1】 わたしたちのまちの かさでらいちりづか   

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 むかしむかしのことです。
 大の仲良しのきんさんとぎんさんが、笠寺の観音さんへお参りにでかけました。東海道の山崎村、戸部村を通り、ようやく観音さんの西門が見えてきました。道路の両側には、松並木が続いていて、木陰には、たくさんの露店が並んでいました。

「きんさん、貸座敷で お茶でも飲んでひとやすみしよまいか」
「そうだなも、ぎんさん。きれいな星崎の松林を見よまいか」
ふたりは、そんなことを話しながら歩いていきました。

 参道に並ぶお店からは、いろいろな呼び込みが聞こえてきました。
「ところてん ところてん 冷えとって うみゃあよー」
「おろく櫛 おろく櫛 あんたらあーが着けたら よう似合うよ。おふたりさん 買ってかないかんわ」
「きしめん きしめん アツアツのきしめん うみゃあで 食べてってちょお」
「やまと茶屋の甘酒は 名古屋でいっちばん うみゃあで 飲んでってちょお」
「蒸し立てまんじゅう、蒸し立てまんじゅう。 あったかで ほっぺたが おちそうなぐりゃあ うみゃあで 食べていきゃあせ」
「奈良漬け 奈良茶飯 茶飯 お土産にどうだゃあも」

 その中に、雨傘を売っているお店がありました。
 ふたりは、なんと、雨傘というもんを生まれて初めて見ました。

「きんさんよ、このなぎゃあ 竹ざゃあくは 何だなも」
「何だろうねぇ。よしよし わしが店の人に聞いたるわあ」
「これって いってゃあ 何つうもんか教えてちょう」
「これかあ。 これはよう 雨傘といって雨降りの時に使う道具だぎゃあ」
 お店の人が教えてくれました。
 これまで、ふたりは、雨が降った時は、からだに羽織る蓑と頭に被る菅笠しか使ったことがありませんでした。

「きんさん、この雨傘というもんは めっずらしいもんだなも」
「ぎんさん、ちょっとたきゃあけど土産に買ってこみゃあ」
「そうしよまい。ぎんときんと ふたりで二本かおみゃあ」
ふたりは、茶店で一服したあと、笠寺一里塚を見物に出かけることにしました。
買った雨傘が歩くに邪魔になるので、雨傘を腰にぶら下げて歩いていきました。

 しばらく行くと、一里塚が見えてきました。そして、一里塚には、一本の大きな木が生えていました。
「きんさん。これが笠寺の一里塚ちゅうもんきゃあ。立派だわなも」
「本当に立派だわなも。ところで、ぎんさんよ。何で一里塚には、サクラやスギの木でなくて、エノキが植わっとるんだなも」
「きんさん、エノキは背がたきゃあし、遠くから旅人の目印になるからとちゃうか」
「いや、いや ぎんさん。エノキは雨風に強いし頑丈だからだわなも」

 ふたりが、一里塚について話しているところへ、近所に住むおじいさんが通りかかりました。
「おみゃあさんたち、それは違っとるでぇ。それは、徳川家康がけらゃあに一里塚の木を植えるにあたって、『ええ木を植えよ。 ええ木を植えよ』と、命じたからだぎゃあ。けらゃあが、『ええ木なあ ええ木なあ』と聞いて、ええ木をエノキと聞き間違えたんだがぁ」
 おじいさんが、親切に教えてくれました。

「きんさんよ。この辺のお年寄りは、おもしれえことを言わっせるなあ」
「ぎんさん、ほんなこったなあ」

ふたりは、一里塚の見物を終え、もと来た道を戻ることにしました。
すると、突然雨が降ってきました。

「きんさん、雨傘のさし方分かるきゃあ」
「ぎんさん、そんなもん分かるわけがにゃあがね」
「きんさん、そんじゃあよ。雨傘を叩いてみやあ」
「ぎんさん、これじゃあ傘が壊れちまうわあ」
「仕方ない、きんさん。雨傘を頭の上に載せてみょうまい」
「ぎんさん、こりゃあ あかんわあ。えりゃあもん買ってもーたなも」
ふたりは雨傘のさし方が分からず、雨に濡れるばかりでした。

 仕方がないので、ふたりは、大急ぎで引き返し、一里塚の木の下に走りこみ、雨宿りをしました。

「ぎんさん わかったわあ。殿さんが一里塚にエノキを植えやーしたのは、旅人に雨宿りができるように したんだなも」
「そうだなも、きんさん。家康の殿さんにお礼しなきゃあいかんわなあ」
ふたりは、一里塚に手を合わせ、頭を下げ、お礼を しました。
 笠寺一里塚のエノキの大木は、今も青々と茂り、私たちに緑の憩いを与えてくれています。これからも大切に守ってていきたいと思います。

よぉー きいて ちょおだいた。
これで おしまい。
[ 2016/09/30 19:08 ] 笠寺観音かいわい | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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