福原伸二さんが遺してくれた笠寺にまつわる逸話「かさでら物語」をシリーズでご紹介します。
【その6】 笠寺観音由来記 その1 
美濃の国の長者の娘で、玉照姫という美しい娘がいました。
鳴海にいた鳴海太郎成高は、玉照姫を自分のものにしようと思いましたが、玉照姫のお父さんとお母さんは断りました。
太郎成高は大変怒り、玉照姫の家に火を付けて、
玉照姫のお父さんとお母さんを殺して、玉照姫を自分の家に連れ帰りました。
太郎成高の奥さんは、玉照姫を憎み、粗末な着物を着せ、
水汲みや洗濯や菜っ葉とり等の厳しい仕事をさせました。
その頃、野原に立つ観音様は、お寺が壊れ、雨露があたり痛んでいました。
気持ちの優しい玉照姫は、自分はいじめられていましたが、
観音様がかわいそうと想い、自分の被っていた笠を、
観音様の頭にそっとかぶせておやりになりました。
野良仕事に出るたびに、玉照姫は、
「観音様、私と死んだ両親を見守ってください」と、祈っておりました。
ちょうどその頃、京都の偉い人で、兼平の中将が、この笠寺の方に来られ、太郎成高の家にお泊りになりました。
兼平の中将は、玉照姫の美しさに、ひと目で気に入り、夫婦となりました。
その後、玉照姫は、観音様への恩がえしとして、
お寺をきれいにして、観音様を奉りました。
笠をかぶり幸福になったことから、
小松寺は、名前を変え、笠覆寺となりました。