猪谷関所館に新しく展示された南砺市井波の彫刻師による円空仏像二体を、私のスケッチで紹介します。
一つは、田中郁聡氏作の「真達羅大将立像(寅)」です。
真達羅大将(しんだらだいしょう)とは、本尊・薬師如来を守る十二守護神の一人(寅神)です。甲冑をつけ、怒りの表情ですが、唯一、武器を手にしていないのが真達羅大将です。ご利益は、人々の願いを叶え、必要なものを手に入れられるよう無尽の施しをすることとされています。
もう一つは、辻和志氏作「クタベ像」です。クタベとは件(くたべ)と書き、白沢と同一視される霊獣のカタカナ表記です。江戸時代に越中国立山に現れた流行り病の予言をおこなう病避けの霊獣です。
古くから立山の深山幽谷には、霊異(不思議なこと)と畏怖(おそれおののくこと)が満ちていると考えられてきました。
言い伝えによると、江戸時代文政の頃、立山に薬種(薬となる原料)を掘りに来た者が、クタベと名乗る獣身人面の怪物に出会った、「4、5年の内に原因不明の難病が流行するが、我が姿を見た者はその難を逃れられる。」と告げたとのこと。その絵を見る者も疫病の難をのがれ、助かることができるとされ、絵を描いて張り置く人も多かったと伝わっています。

猪谷関所館へお出かけいただき、ご覧ください。