私は、最近、神通峡周辺に残る民話や伝説に興味が出てきて調べ始めた。
その中に、蟹寺地域に残るおもしろい昔話がある。蟹の化け物を退治した話である。その化け蟹伝説で活躍した禅僧が、富山市梅沢町にある海岸寺のお坊さんだと民話には記されている。それは今から240年も前のことだから、現在もそのお寺があるのか半信半疑だったが、電話帳を開くと、何と「海岸寺」と名前が載っている。これはおもしろいと、早速出掛けることにした。
梅沢町はお寺が密集しているところだった。富山の寺町に当たるところなのだろうか。そのお寺の中に、目指す海岸寺はあった。「海岸寺」は富山幼稚園の隣り、いや、富山幼稚園を境内で運営しているお寺だった。しか、残念ながら、この日は、和尚さんは不在だった。やはり、アポを取ってから訪れるべきだった。
アポを撮り、数日後、再び、海岸寺を訪れたが、その時は、卒園式の真っ最中だった。失礼しようかと思ったが、会って頂けるとのこと。しばらく応接室で待つと、気さくな和尚さんが現れた。
「化け蟹の話は、このお寺を開いた瑛の話として伝わっています。蟹の甲羅をずっと寺宝として保管していたのですが、富山大空襲で焼けてしまいました」と和尚さんは話してくれた。民話・伝説を訪ね歩く旅は、思いがけない人との出会いがあり、実に楽しいものである。
クリックすると大きくなります