街中の細い道を進むと、右手に小さな池が見えて来た。常楽寺はその池の辺にある。駐車場には、寝袋やテントを積んだ自転車が2台停まっていた。自転車遍路をしている人がいるようだ。
お寺への階段を上り、山門を抜け境内へ入った。赤茶けた地面の向こうに大きな本堂が見える。その手前にベンチがあり、菅笠を被ったお遍路姿の二人の青年が座っていた。自転車の持ち主は、その青年たちらしい。自転車遍路も山続きの遍路道だから、本当に大変だ。二人とも真っ黒に日焼けしていた。歩き遍路や自転車遍路には、若者の姿が多い。体力がなけば挑戦できないから、当然そうなるのだろうが、青年はなぜお遍路しようと思ったのか、聞いてみたいものだ・・・。
本堂へお参りに行く。赤土とばかり思っていた地面は、赤茶けた岩肌だった。このお寺は、硬い岩盤の上に建っていたのだ。お参りを済ませ、納経所へ行くと、団体さんの納経帳が山積みになっていた。前のお寺で会った人たちの物だ。二人のお坊さんが流れ作業のように納経帳を処理していた。
その納経帳の中に、ページが真っ赤になった納経帳が交じっていた。お坊さんは、その真っ赤なページを開き、朱印をその上から三つ押している。朱印を押したのか押さなかったのか、後から見てもきっと分からないだろう。納経帳を新しく替えなければ、何度もお遍路している人の納経帳は、朱肉でだんだん赤く染まって行くことになる。「私はお遍路に年季が入っているのだぞ」と納経帳を見れば分かるのだ。こういう人は、朱印を押すという動作にお金を納めていることになる。お遍路さんにも達人がいるのだ。

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