善楽寺から竹林寺へ向けて出発したが、道に迷ってしまった。高知の道には、お遍路寺の標識が少ないのだ。竹林寺が近くにあるという高知港を目指して走ることにした。高知市内に入り、車が多くなる。「高知港」という標識を見つけホッとする。竹林寺はもうすぐのようだ。
竹林寺は高知港近くの五台山頂上にあった。駐車場には観光バスが何台も停まっている。辺りは大きな公園になり、展望台からは高知市内や浦戸湾が見渡せ、観光スポットになっていた。牧野富太郎記念館や牧野植物園も併設されている。植物学者の牧野富太郎が高知県出身だったことを初めて知った。
竹林寺本堂へ向って、木々に囲まれた参道を歩いて行く。石畳の参道には、新緑の間を抜けて来た柔らかな光が、差し込んでいる。「チリンチリン」と金剛杖に付けた鈴の音が参道に響いている。何か不思議な世界に入った感じで、石畳を歩いて行った。
本堂のお参りを済ませ、大師堂へ向う。右手の石段の上に鮮やかな朱色の五重塔が聳えている。立派な五重塔だ。観光客の一団が、石段の所に並んで記念撮影をしていた。お遍路寺でありながら、お遍路さんと観光客が混在している景色を見たのは、このお寺が初めてだった。観光客はお参りに来たのではなく、このお寺を見学に来たようだった。庭園の見学は有料になっていた。
大師堂のお参りを済ませ、五重塔をスケッチした。たくさんの人の中でスケッチするのは恥ずかしい。「上手ですね」と覗き込んできたおばさんから言われた。この旅の中で、腕前が上達したのだろうか。

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