種間寺から清滝寺へ向う道で、道路脇で休んでいた豊橋の青年を見つけた。「道に迷って困っています。青龍寺へ行く道を調べていた所です」と青年が笑っている。「私は、清滝寺へ行く所です」と旅人が言うと「清滝寺は、この道を逆に行かないと行けませんよ」と青年が言った。旅人も道に迷っていたのだが、気づいていなかっただけだ。青年は元気そうだった。
清滝寺は、細い山道を上り詰めた所にあった。駐車場に車を停めると、「やあ、無事到着しましたね」と「なにわ」ナンバーの自動車から、髭モジャの親父さんが降りて来た。「あなたを前のお寺で見かけたので、たぶん次はこの寺だと思って待っていたのです。無事到着して何よりでした」と髭モジャの親父さんは笑ていた。旅人の到着が遅いので、心配してくれていたのだ。大阪からお遍路に来たそうで、巡礼も、5回目になるとのことだった。「次の青龍寺も行くのが難しいから、私の後に付いて来るといいよ」と親切に言ってくれた。お参りを済ませたら、一緒に行くことにした。
清滝寺の境内には巨大な観音様が立っていた。光を受けて日輪がキラキラ光っている。お参りを済ませ、スケッチを始めると、「スケッチしながらお遍路しているとは、優雅だ」と髭モジャの親父さんは、感心していた。「色はどうするのかい」と聞かれ、「家へ帰ってから塗るつもりで、写真で記録しています」と答えた。「そういう方法もあるのか」と親父さんは驚いていた。
スケッチを終え、青龍寺へ出発した。旅人の車の前には「なにわ」ナンバーの自動車が走っている。高知のお遍路道は素人には迷い易いということなのだ。親切なお遍路さんのお陰で、青龍寺へは間違いなく行けそうだ。

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