仏木寺から30分ほどで明石寺に着いた。駐車場にはたくさんの車が停まっている。観光バスも何台かある。愛媛県に入ってから、お遍路寺が賑わっている。
参道を歩き、石段を少し上ると、石段の先に立派な山門が見えて来た。屋根には赤瓦が使ってある。赤い屋根を見たのは、このお寺が初めてだ。石段を上り詰めると本堂があった。本堂も立派で、ここの屋根も赤瓦で拭かれ、柱も朱色に塗られていた。今はくすんで歴史を感じさせる建物だが、出来た頃は、真っ赤な光を放っていたのだろう。
団体さんのお経が終わってから、旅人はお経を詠み始めた。般若心経の最後の部分で、息継ぎの仕方がよく分からなかった所が、すらすら詠めるようになっていた。旅人にとっては、団体さんは、大切な先生になっているようだ。
納経所へ行くと、納経帳が山積みになっていた。受付のお坊さんが、大忙しで納経帳に朱印を押している。愛媛のお寺は、繁盛しているようだ。
山門をスケッチしようとしたが、石段に隠れて、山門全体が見えない。そこへ、カメラをもった親父さんがやって来た。山門を狙ってシャツターを押している。「残念だね。もう少し後ろへ下がれたら、山門が全部入るのに」とぶつぶつ言っている。「私もそう思っていたのです」と旅人が言うと「絵なら、描けるのではないの」と、親父さんは不思議な顔をした。「私は見た通り描いているから、カメラと同じですよ」と言うと「なるほど。絵も写真も一緒か」と親父さんは分かったような顔をして去って行った。旅人も、山門はあきらめ、本堂をスケッチした。

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