岩屋寺は、説明書には、「岩をくり抜いた所にお堂がある」とあり、そそり立った岩肌にお堂が建っている写真の紹介もある。ずっと山を上って行かないと着けないお寺のようだ。
駐車場に車を停め、参道を上って行く。予想していた通り、険しい道が続いている。石段の所で、おばあさんが休んでいた。「まだまだ、ここは始まったばかりだよ」と旅人に話してくれたのだが、そういう声は、旅人にではなく、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
石段を団体さんが下りて来た。皆、ニコニコしながら歩いている。話し声も聞こえ、余裕たっぷりの感じだ。一方、旅人の方は、息が上がり、挨拶する余裕もない。帰り道は、あの団体さんのような表情で歩いてやろうと思ったが、それにしても辛い上り道だった。
階段を上り詰めた所に、岩屋寺はあった。説明書通り切り立った崖にへばりつくようにお堂が建っている。本堂の銅版の屋根が葺き替えられたばかりで、ピカピカ光っていた。その奥に梯子があり、崖の上へ上って行けるようになっている。ここから300mほど上った所に大師の行場があるそうだ。
このお寺の本尊は、不動明王で、それも2体あるという。一つは木像で、本堂に納められているが、もう一体は石像で、山に封じ込め、山そのものを本尊とし、それが岩屋寺と名前が付いた由来だそうだ。岩屋寺は、寺名に相応しい場所にあった。
帰り道は、自然と足が前へ出て、上って来るお遍路さんに笑顔を振り撒いた旅人だった。

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