「道の駅 ひろた」の横を自転車通学する中学生の一団が走って来る。白いヘルメットをきちんと被り、制服もピシッと着て、一列になっている。だらだらした所が全く感じられない。「おはようございます」と大きな挨拶をしながら、旅人の前を通り過ぎて行った。「きびきびしていて、気持ちがいいですね。今時、珍しい中学生たちですね」と、大宮から来ている親父さんも感心していた。そういえば、ここの道の駅は、他の道の駅と少し違った所がある。普通なら設置してある、ゴミ箱や自動販売機が全くないのだ。しかも、掃除は行き届き、ゴミ一つ落ちていない。道の駅も生半可ではないのだ。広田村は、大人たちもビシッとしているのだ。すがすがしさを感じさせる村だった。
西林寺へ到着した。山門を入ると、一人の若者が絵を描いていた。はがきにペンで描いている。たくさんのお遍路さんが、彼のスケッチを覗きこんでいた。「上手いですね」という声も聞こえて来る。本当に上手な絵だ。今まで描いたペン画も、ストックブックに入れて、展示してある。「ペン画はこう描くのですよ」と彼は、自信満々で描いている。プロの絵描きなのだろうか。「一つのお寺で1日過ごすことにしています。何枚も描くから、そのお寺の建物はほとんど描きますね」と若者は答えた。一つのことを徹底してやるということが大切なのだ。それに比べて、旅人は実にいい加減なスケッチを描いている。深く反省した旅人だった。
お参りを済ませ、お寺の山門をスケッチした。山門の向こうでは青年がペン画を描いている。旅人は、久しぶりに緊張しながらスケッチを描いた。「このお寺には、絵描きさんがここにもいるのだ」と言いながら、お遍路さんが旅人の横を通り過ぎて行った。

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