繁多寺は、浄土寺から2kmほどの所にある。お寺とお寺の距離がこのくらいだと、歩き遍路をしていても楽しくなりそうだ。歩き遍路が多い訳だ。時間があれば、歩き遍路に挑戦してみたいのだが、余裕がないので残念だ。
繁多寺に到着した。車から降りると、岩手のおじいさんの車が入って来た。一緒にお参りに行くことにした。山門を抜け、境内へ出た。境内が広いのには驚いた。その境内の向こうに本堂や鐘楼、大師堂などの建物が並んでいた。境内を横切り、まず本堂へお参りに行く。
線香を立て、ロウソクを立て、納札を入れ、賽銭を入れた。岩手のおじいさんも同じ手順だ。般若心経を詠み始めた。「お経は人に聞いてもらうものではない。お経は大きな声で詠む必要はない」と、どこかのお寺で話している人がいた。それからは、旅人は、お経は自分に聞こえるほどの大きさで詠むことにしていた。おじいさんのお経も、自分にしか聞こえないほどの小さな声だった。
それから、大師堂へ行った。大師堂が終わると、「別のお堂も参ってきます」と、おじいさんは出掛けて行った。旅人は、納経を終え、広い境内でスケッチをした。スケッチが終わる頃、おじいさんが帰って来た。「一生懸命お参りしているのですね」と言うと、「最初の頃は、お参りも本堂と大師堂でした。でも、お寺を巡っている内に、お堂や、お地蔵さんもお参りしていこうという気持ちになりましてね」とおじいさんは答えた。それに比べて、旅人は、お経がすらすら詠めるようになり、今では5分ほどで終わっていた。やはり、旅人は俄か遍路の域を脱していないようだ。

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