石手寺は道後温泉の真ただ中にある大きな寺である。お寺の参道には、土産店がずらりと並んでいた。「ここがお遍路寺ですか」と、勘違いするほどだ。道後温泉を訪れた人たちが足を延ばし、この石手寺へお参りに来ているようだ。
石手寺の歴史は古く、728年聖武天皇の勅命で伽藍が建てられたことが始まりだという。翌年、行基が薬師如来を刻み、それを本尊とし、安養寺と名付けたが、100年ほど後、弘法大師が巡錫し、真言宗に改めた。それから80年ほど後、石手寺と改名された。楼門は国宝、本堂、三重塔、護摩堂、鐘楼、銅鐘、五輪塔などは重要文化財に指定されている。
納経所隣にある茶堂が、たくさんの参拝客で賑わっている。香盤には線香が山のように積み上げられ、朦朦と煙を上げていた。
本堂は、参道を真っ直ぐ行った正面にあった。その手前に、立派な三重塔が建っている。塔の前には、千羽鶴が何百も並び、「人命尊重」という大きな看板が立っていた。「イラク戦争で命を亡くした犠牲者を慰霊する」という大きな表示もある。人と人が殺し合うことを止めなければ、「人命尊重」はない。このお寺は、「イラク戦争反対」を強烈にアピールしていた。大切なことを、このお寺は訴えていると思った。お坊さんの勇気に拍手を送りたい気持ちだった。
本堂と大師堂でお参りした。旅人は、愛媛に入った頃から、お経の終わりに「南無大師遍照金剛、願くばこの功徳を以って普く一切に及ぼし我等と衆生と皆共に仏道を成ぜん」と祈るようになっていたが、このお寺からは「世界が平和でありますように」という願いも祈ることにした。

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