栄福寺の大師堂でお参りをしていると、お遍路さんが続々とやって来た。泰山寺で見た歩きお遍路さんの一団だった。栄福寺は、泰山寺から3kmほどの所にある。出発して40分ほどで到着するとは、歩くスピードは結構速いのだ。
納経を済ませ、大師堂をスケッチしていると「今日は、20kmほど歩くから少し大変だけど、日頃の運動不足解消にはもって来いね」と中年の女性が話しているのが聞こえる。「川あり、山あり、谷ありのコースだから景色はいいよ」と隣の旦那さんらしい人が相槌を打っていた。
「歩き遍路の皆さんご苦労様です」とお寺の人たちが、お遍路さんを出迎え始めた。「冷たいお茶を用意しましたから、どうぞ召し上がってください」と、お茶を勧めている。「どうもありがとうございます」歩き遍路さんたちはニコニコ顔だ。
「歩き遍路さんには、お接待としてお握りを用意しました。ぜひお受け取りください」とお寺の人たち は、お握りも配り始めた。「歩き遍路さんならだれでもお握りをどうぞ」ということなのだ。喜ぶお遍路さんやら、恐縮するお遍路さんやら、和やかなお接待風景が栄福寺の境内で見られた。「お接待とは、本当はこういうことなのよ」と間近にその場面を見せ付けられ、驚いた旅人だった。愛媛県伊予の国は「菩提の道場」と言われるが、「菩提」とはこういう風景を指しているのだろう。もちろん歩き遍路でない旅人に、お握りが配られなかったのは当然である。
新しいサイズで取り組んだお寺のスケッチは散々だった。日頃描き慣れた大きさと微妙に違うことで、画面の大きさが掴めないのだ。これからしばらくは苦しみそうだ。

クリックすると大きくなります