参道を歩き、境内へ入ると、正面に紫色をした巨大なビルが見える。美術館か博物館だと思っていたのだが、これが香園寺の建物だった。「お寺にはお寺の屋根がある」ずっと、そう思っていた。まさか、巨大なビルがお寺であるとは、信じられない。たぶん、ここを訪れたお遍路さんは「えっ、これがお寺!」と、旅人と同じような感想を持つのだろう。
手元にある資料によると、お寺の歴史は古く、聖徳太子が創建した。この地を巡錫した弘法大師は、安産、子育てのお身代わりに女人成仏の四誓願と秘法をこのお寺に伝え、ここを霊場に定めたという。
大正時代に入って、先住の住職が、子安講を組織し、20万の信者を持つに至り、現在、信者は40万を超えているという。この建物は、現在の住職が、昭和51年に6億円の費用をかけて本堂にかわるものとして建てたとのこと。鉄筋コンクリート地下1階、地上2階。2階の本堂には金色に輝く本尊の大日如来を奉り、827個の椅子が並び、椅子に座ったまま移動しないでお参りができるようになっていた。300名が宿泊できる宿坊もあるという。お遍路寺の先頭を走っているようなお寺だった。
1万坪あるという広い境内の隅で、超近代的なお寺をスケッチした。大都会では、ビルの中にあるコインロッカーのような所が、お墓になっているという話も聞いたことがある。こういうお寺があっても不思議ではないのだが、お遍路寺には、歴史を感じさせるお寺らしい建物が似合っているのではないかと、旅人は思った。

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