国分寺から国道11号線をしばらく走り脇道へ入ると、次第に山道になる。白峯寺は山の中にあるお寺だった。
小さな山門をくぐり、薄暗い境内へ入ると、正面に崇徳天皇の菩提をとむらう頓証寺殿が見えてきた。本堂と大師堂はそこから石段を上った所にあるという。
見上げるような石段を上り、本堂へお参りに行く。辺りは薄暗くローソクの火が明るく感じられる。お参りを終え、大師堂へ行くと、大きな犬を連れたおばさんが歩いて来た。手にはバケツを下げている。「何をするのかな」と見ていると、おばさんは、香盤の中の燃え残った線香やローソクを集めバケツに入れ始めた。
旅人がずっと疑問に思っていた一つが解決した。それは、「お遍路さんがお参りするために立てたローソクはどうなるのか」ということだった。お寺の人が毎日夕方、バケツで回収していたのだ。こうして次の日のお遍路さんは気分よく、最初のローソクを立てられるのだ。ところで、回収されたローソクはどうなるのだろうか。新たな疑問が生まれたのだが、この疑問は、お遍路の中で解決されるのだろうか・・・。
スケッチを始めたら、白い帽子を被った親父さんが石段を下りてきた。さっきすれ違った人だった。「今日はここで終わりですね」と声を掛けると、「いや、まだ5時まで15分あります。次のお寺へぎりぎり間に合いそうですよ」と親父さんは車へ走って行った。旅人もスケッチを大急ぎで終了させ、次の札所を目指して車を発車させた。

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