志度寺は志度湾に面した道路沿いにあった。境内へ入ると、朱色に塗られた五重塔が聳えていた。立派な五重塔だ。お遍路寺で五重塔を見たのは、竹林寺、本山寺、善通寺、そしてここということになるが、志度寺の五重塔は、昭和50年に建てられた新しい建物だった。大阪へ出て成功した人が建立したのだそうだ。五重塔が、お寺に出現した時は、きっと大騒ぎだったに違いない。
そこから参道を少し行くと広い境内へ出た。昼時で境内は閑散としている。お参りを済ませ、境内にあるベンチに座って大師堂をスケッチした。鄙びた感じの建物だ。長い歴史があるのだろう。
そこへ団体さんがぞろぞろと入って来た。お坊さんの号令で、お経が始まった。静かだった境内に、大きな般若心経が響き始めた。大きくなったり小さくなったりしてお経は響いている。どこかのお寺で体験した時と同じように、不思議な感覚が旅人を包み込んでいた。お経が響く世界の中で、必死に鉛筆を走らせている旅人の姿が見えるようだ。八十八番寺まであと2寺。不思議な体験は、これが最後かも・・・。
志度寺のすぐ近くにうどん屋さんがあった。昼はそこで食べることにした。店の入口で、岡山の親父さんに出会った。おもしろい所で出会うものだ。「味はもう一つだけど、値段が安いのには驚きました」と親父さんは笑っていた。店の中は昼時で混んでいる。セルフサービスの店である。ざるうどんを注文した。トッピングすると値段が高くなっていくようだ。何もトッピングしなかった旅人は250円だった。驚くような値段だ。味は、岡山の親父さんが言った通りにもう一つだった。

クリックすると大きくなります