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桜の花が散り、山の木々が一斉に芽吹き始めた。いつもの年なら、もうとっくに山へ上り、コゴミゼンマイやフキノトウなど春の香りを収穫しているのだが、今年は3月から忙しく、なかなか山に行けなかった。ようやく時間ができ、ゼンマイやワラビを求めて、今年初めての山行きを決行する。
林道を上り、去年ゼンマイを収穫した場所に到着した。「○○では、○○が採れる」というのは、誰にも教えないのが、山菜採りである。旅人にもそういう場所がようやく見つかったようで、時期は少しずれていたが、この場所を歩いた形跡はなかった。
細い道を歩き始めると、去年と同じように山肌にゼンマイが「さあ収穫してください」と言わんばかりに芽吹いていた。細入村に移り住んだ頃は、ゼンマイを見つければ、根こそぎ収穫していたのだが、ゼンマイには男ゼンマイと女ゼンマイがあり、男ゼンマイは子孫繁栄のため、収穫してはいけないということも理解し、また女ゼンマイも一本は残すようにしている。小一時間で、持って来た手提げ袋も一杯になった。ワラビはまだ時期が早かったようだ。もう一週間もすれば、顔を出すのだろう。
帰りに、眺望の効く展望台から神通峡を眺めた。湖水は青く輝き、山々の木々は一斉に芽吹き、素晴らしかった。親父にこの風景を見せてやりたいと思った。