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梅雨前線が北陸地方に居座り、雨模様の天気が続いている。一時的ではあるが、雷が鳴り、激しい雨が降る。神通川は濁流が渦巻き、轟轟と流れている。
不謹慎ではあるが、こういう時でないと描けない絵を求めて家を出発した。目的地は神通峡吉野。ここは、片路峡と呼ばれる景勝地で、そこには、深い谷を堰き止めたダムがある。今日は、そのダムの放流をスケッチしようというのだ。
神通川に架かる吉野橋に到着。予想した通り、第一ダムのゲートが開き、濁流が放水されている。その数は三本。落下する濁流が、水面に衝突し、水煙が立っていた。吉野橋の真中から見ているからなのだろうか。吸い込まれそうな恐怖心を覚えた。
吉野橋から片路峡を眺めると、いつもは、川原が広がつているのだが、今日は深い谷がすっかり濁流で埋まっていた。「この写真、どうみても片路峡のようですが、こんなに水が流れる時があるのですかね」と去年、知人と一枚の写真を見て話していたことを思い出した。目の前の片路峡はその時の写真そっくりだった。この景色も絵に描かなくてはと、スケッチを始める旅人だった。