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雨が降る相倉集落を歩き始めて、数分後、予想もしていないハプニングが起こった。何と、名古屋に住む友人(彼は、旅人たちがよく知っている友人で、昨夜も、彼のことが食事の時に話題になった)が、この集落の中を、黄色いカッパに身を包んで歩いて来るのだ。
「どうして、ここにいるの」というのが、友人と旅人たちから同時に発せられた言葉だった。
旅人たちは、立山や宇奈月を雨のためにあきらめ、合掌集落なら見学できるとやって来たのだ。友人は、地域の団体旅行に参加し、ここが観光地に設定されていて、たまたま立寄ったということだった。どちらも、偶然に近い状態で、相倉集落へやって来たのだ。しかも、時刻が数分ずれていれば、決して出会うことはなかった。
こういう出来事は、何と表現したらよいのだろうか。偶然と言えば偶然なのだが、男女の関係なら、「赤い糸で結ばれている」と表現するのだろう。推理小説のネタにもなりそうな話である。「今日、宝くじを買ったら当たるかも知れない」と思う旅人だった。
この出来事は、近年にない最大のハプニングだった。