1 はじめに
富山の桜の名所「松川べり」には、彫像がいくつも並んでいる。旅人は、何度もここへやって来たことがあるので、ここにたくさんの彫像が並んでいることは分かっていたが、彫像にはあまり関心がなく、「その数が、幾つあるのか」、「誰の作品なのか」、「何時から、ここにあるのか」など、詳しいことは何も知らないでいた。
例年のように、今年の春も、松川べりの満開の桜を見に行った。松川べりは、たくさんの人で賑わっていた。今年は、その風景をスケッチした。そのうちの一枚に、彫像の一つを描きこんだのだが、ふと、「ここの彫像のことを、調べて行ったら、何か面白い発見ができるのではないか」と思ったのだ。
家へ帰って、インターネットで検索すると、「県内在住、あるいは県出身の彫刻家の作品28点が設置され、松川べり彫刻公園となっています」と説明があった。しかし、それ以上のことは、見つけることができなかった。
一つのことを追求しだすと、ついつい、突っ走る性格の旅人は、さっそく、市役所に電話した。「松川べり公園は、市の公園緑地課の管轄です。彫刻について、くわしい資料がありますから、おいでください」と、快い返事をもらうことができた。
数日後、富山市役所の公園緑地課へ出かけると、「先日の方ですね。松川べり彫刻公園のパンフレットを用意しました。どうぞご覧ください」と、1枚のパンフレットを渡された。文章から判断すると、かなり以前に作られたパンフレットだった。「松川べり公園は、『水と緑のプロムナード』というテーマで、企画され、昭和56年から昭和58年までの3ヵ年計画で整備された」と説明がある。公園が完成してから18年の月日が経っていた。また、パンフレットには、彫刻の作家名、作品名、配置場所なども、詳しく紹介されていた。完成してから、かなりの月日が経過しているので、彫刻作家の多くは、故人になっているかも知れないと思った。
これから、一つ一つ、詳しく調べていくことだが、彫像のスケッチも入れてまとめたら、結構おもしろい旅日記になるのではないだろうか。例によって、気ままな旅人の気まぐれから、この旅日記は、始まった。
「被災地のみなさんへ。みなさんと心はひとつ。生きる望みを捨てないで、がんばってください」と祈っています。