水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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神通峡をたずねて 猪谷かいわい 12

伝えたいお話 あれこれ 2

 神岡鉱山と軌道馬車 

 寛永四年(一六二七)茂住宗貞によって発見された神岡鉱山は、明治十九年(一八八六)に三井組がこの地域鉱区全山の経営に乗り出した。
 洋式の生産技術の導入により、銅、鉛、銀等の生産量が増加すると、当然その製品や生産に必要な物資の輸送が増え、昔ながらの荷馬車輸送では賄いきれない状態であったと推測される。
 明治二十三年(一八九〇)船津~富山間の道路が県道に昇格され、拡張、改修、橋梁架設などにより馬車による交通運搬が容易になったが片道に二~三日要した。
 鉱山産出物のうち鉛は高山へ、銅、鉛は富山へ搬出され、さらに海路あるいは陸路で遠方へ送られた。
 明治三十九年(一九〇六)神岡鉱山は亜鉛精錬を始めたが、富山から船津へのコークス輸送が増大し、これの対応策として明治四十三年(一九一〇)、鹿間~土間に玉村鉄策を新設、土~杉山間に「馬車軌道」を敷設した。軌道幅は十六フィート(約四十九㎝)であったが、これは当時の近代的設備であり、荷馬車の二~三倍の輸送力があったという。
 鹿間~笹津間の馬車軌道の開通年次は、(笹津~茂住 大正四年)(笹津~土 大正六年)(笹津~鹿間 大正九年)(笹津~船津 大正十二年)これらは千尋の絶壁を縫って完成された。
 (鹿間~笹津)の全線開通により馬車軌道の活躍する時代となった。軌道の総延長四十七㎞、東猪谷が中継所となり、上りと下りと二手に分かれて馬車引き(馬方)が行き来した。
 当時の東猪谷駅での引き馬は小糸、舟渡、横山合わせて四十数頭で、うち半数は東猪谷で飼っていた。

image3111.jpg大正10年頃 馬車鉄道に使った馬 (細入村史より) 

寺津、猪谷駅にはそれぞれ手配責任者がいて、荷物の出入り、搬送を管理していた。(荷物以外は乗せないことになっていたが、地元民、特に老人、婦女子などは馬方に頼んで、こっそり荷物の間に隠れてシートを被り乗って行った。着駅ではシートをめくって見るなど厳重であったが、中には見逃してくれるやさしい人もいたという)
神岡鉱山の発展と時代の推移につれて、馬車軌道による運搬が動力化されるのは時間の問題であった。やがて、神岡水電が自動二トンのガソリン機関車一台を資材運搬に提供されたことに動力化が始まる。
 鉱山がかってない大掛かりな線路調整と整備を行って、試運転をしたのは大正十五年五月、続いて昭和二年、ドイツ製三・五トンロコ五台投入運転、さらに昭和三年に六台投入し、笹津~鹿間間全線の動力化を完成した。全線馬車軌道で運転するようになってから八年目である。
 かくて馬車軌道は廃止された。地元の人々はガソリン機関車のことを「エンジン」と呼び、また「ロコ」とも言った。子供達は「エンジン」の吐く排気を嗅いで後を追っかけ運転士に怒鳴れた。
 さらに昭和五年(一九三〇)十一月、国鉄飛越線の富山~猪谷間の開通に伴い、会社は翌六年、舟渡~西猪谷間に神通川を横断する専用の鉄橋、神通橋梁(長さ二八〇m 高さ三十六m)を架けた。

image3112.jpg(細入村史より)  

 これにより鹿間~笹津間の軌道は鹿間~西猪谷間に変更短縮され、笹津駅に代わり西猪谷駅が輸送拠点になった。この「ガソリン機関車軌道」は、神岡水電猪谷発電所の建設(大正十二年~昭和四年)に大きな力を発揮し、また引込線を入れてインクラインに連絡荷物の発着に便ならしめた。
 さらに輸送機関の増強が必要と真剣に考えられ、トンネル、掩蓋、橋梁、軌条、道床などの整備相次ぎ、昭和八年国産五トンロコが購入され、次第に増備された。
 その後、蒸気機関車の利用、八トンロコを導入し、拡大する輸送に対応した。
 神岡軌道は、戦前、戦中、戦後の唯一の物資輸送機関であり、戦後一時(昭和二十三~三十七)は、旅客輸送もした。
 明治の馬車軌道に始まり、大正、昭和と三代にわたって地域経済や産業に大きな役割を担ってきたこの軌道も、昭和四十一年(一九六六)十月、国鉄神岡線が開通したため、昭和四十二年三月廃止され、沿線の人々に惜しまれて遂に終焉の幕を閉じた。
(郷土研究大沢野「ふるさと下夕南部」 磯上長五郎記より)

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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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