富山から高岡へ 1月20日土曜日。今日の天気予報は「日中は曇り時々雨」。家で静かに過ごせばいいのだが、冬の「青春18きっぷ」が使用できるのは今日が最終日。列車に乗って氷見まで出掛けることにした。切符が2人分残っていたので、かみさんを誘う。「いっしょに行ってもいいがけ。雨晴は何十年振りだろかね」とすっかり富山弁に戻ったかみさんの嬉しそうな声が返って来た。久しぶりにかみさんとの2人連れになった。
楡原駅から富山行普通列車に乗車する。高山本線を走る普通列車はワンマンカーになってしまったが、高山から来る列車には車掌が乗車していることが多い。楡原9時発の列車は高山から来ている。やはり車掌が乗車していた。やって来た車掌に青春18きっぷを渡し、検印を貰う。普通列車に乗って旅をするには格安の切符である。
今日は土曜日だが、列車は空いている。ボックスシートに座り、車窓の景色を眺める。笹津を過ぎた辺りから立山が見られるのだが、残念ながら雲に霞んでいる。越中八尾を過ぎ速星を過ぎてもかなりの積雪だ。正月から降り続いた雪は里雪だったようで、細入村と変わらないくらい多い。家々の屋根からずり落ちそうになっている雪に大きなツララが下がってている。「お化けだぞ」と手をだらっと下げた姿に似たツララもある。これをそのまま真夏に持って行けたら、商品価値の高い品物になるのは間違いないだろう。
9時43分富山駅に到着した。雨晴に行くには、ここから北陸本線に乗換えて高岡に行き、高岡で氷見線に乗換えなければならない。列車の待ち合わせ時間があり、少し不便な所もあるが、待ち時間をいろいろな方法で過ごすのも旅行の楽しみである。
待ち時間を使って、富山駅のホームで売られている駅弁を調べてみることにした。時刻表にいろいろ紹介されている。「ますのすし弁当(650円)」「柿の葉すし(850円)」「立山弁当(900円)」「えび釜めし(1000円)」「かにめし(1000円)」「祝ずし(1000円)」「押寿し日本海(1000円)」「田舎ずし(1050円)」「ますのすし(1100円・2100円)」「ニ味笹すし(1100円)」「加賀彩時記(1100円)」「夫婦釜めし(1200円)」「ぶりのすし(1300円)」「ますぶり重ねずし(2370円)」実にたくさんの種類の駅弁が紹介されている。

ホーム売店のウィンドーに駅弁の見本がずらっと並んでいる。「いらっしゃいませ」と売店の女性の声が掛かるが、「いえいえ、私は買うのではありません。眺めるだけの客ですから、申し訳ありません」と声にならない声で答えながら、並んでいる駅弁を眺めていった。「やっぱ富山といったら、ますずしだちゃ」とかみさんが言う。売店の上にドーンと「ますのすし」が山積みになっている。2段重ねの寿司である。昼の弁当に買うには少々高価である。富山へ行った土産として買う人が多いのだろう。その横に、見たことのない小ぶりの「ますのすし」が並んでいた。「ますのすし」を切り身にし、3つで450円という手ごろな値段だ。富山の名物を少しだけ味わってもらおうと考えられた商品のようだ。ヒットしそうに思った。
10時11発高岡行普通列車に乗車する。列車は混んでいる。若者の姿も多い。年輩の客は長靴を履いているが、若者はほとんどがスニーカーかブーツである。若者は雪をあまり気にしていないようだ。呉羽、小杉を過ぎ、間もなく高岡だ。何処もたくさん雪に埋まっていた。屋根からずり落ちようとしている雪に、家が悲鳴を上げているようだった。
10時32分高岡駅に到着した。高岡は鋳物の街だ。江戸時代に鍋・釜・鋤・鎌などの日用品の鋳造が始まり、やがて、釣鐘や仏像など銅器鋳造の技術が発展し、今では全国唯一の銅鉄器産地となっている。駅の構内にはたくさんの銅像や大きな皿などが飾られている。市内には歴史を伝える施設もたくさんある。ゆっくり時間をとって見学したい町である。