雨晴海岸 10時40分発氷見行普通列車に乗車する。2両編成のワンマンカーである。家々が建ち並ぶ狭い間を列車はゆっくり走って行く。細い路地の中を走って行くという感じだ。ここでも屋根から大きなツララが下がっている家が目に付く。
伏木港が見えて来た。石油タンクや化学工場の煙突が並んでいる。しばらくすると海が見えて来た。富山湾である。空は雲におおわれているが、波は静かである。やがて頂に数本の木が生えた島が見えて来た。有名な女岩である。この島から見た立山連峰は美しく、富山を宣伝するポスターに使われることが多い。私も今日はカメラを持って出掛けてきたのだ。
10時59分雨晴駅に到着した。駅のすぐ前が海水浴場になっているようだ。夏はたくさんの家族連れで賑わっているのだろう。列車を下りて、駅の待合室へ入って行くと、りっぱな観光案内所が設置されていて、受付に老人が座っていた。雨晴海岸を宣伝したパンフレットや絵はがき、ポスターなどが置いてある。冬でもたくさんの観光客がここを訪れるようだ。

道路を歩いて行く。歩道があっても、そこは除雪した雪が溜まり、人は仕方なく車道を歩くことになる。冬の雪国の道は歩く所でないということを今年、痛感している。危険を少し感じながら、駅前の道を5分ほど歩いた所に義経岩があった。その昔、源義経が奥州落ちの途中、にわか雨にあって雨宿りしたしたというのがこの岩である。
雪の積もった細い道を歩いて線路を横切り、階段を下りて海岸に出た。砂浜には雪が積もり、冬の雨晴海岸だった。静かな海の向こうに女岩が見える。黒い岩肌に雪が薄っすらと積もっている。その向こうに立山連峰が微かに見えた。雨晴の海は澄んでいて、小さな貝が波打ち際にある小さな岩にたくさんくっついていた。

観光バスが駐車場に停車し、しばらくするとたくさんの人が海岸に下りてきた。手に手にカメラを持ち、絶景ポイントに向けてシャッターを切っていた。「晴れたらここから立山の美しい姿が見えるのに残念だね」という声が聞こえて来た。誰の想いも同じだなあと思った。天気のよい日に再度訪れよう。