氷見へ 雨晴の見学を終え、12時11分発氷見行普通列車に乗車する。せっかくここまで来たのだから、昼ご飯は氷見の町で食べようということになったのだ。「氷見の町は、懐かしい思い出があったちゃね。家族みんなで美味しい魚をしっかり食べて、もう魚の顔も見たくないと思ったことを覚えとるけ」とかみさんが笑って言う。今でもあの時の家族みんなで食べた料理の味を、私も思い出すことがある。その氷見の町で今から美味しい魚料理を食べようということなのだ。
12時19分氷見駅に到着した。氷見線の終着駅だ。駅は大きくて売店もあり、賑わっている。駅の構内には大きな観光案内所があり、受付に男性が座っている。雨晴は高岡市。ここは氷見市。どちらも、観光に力を入れている様子が伝わって来る。駅前に出てみたが、食事のできる店は見当たらない。案内所で貰ったパンフレットを見ながら、氷見漁港にある道の駅「海鮮館」まで歩いて行くことにした。
道は除雪された雪が積もり、歩きにくい。だからといって車道は車が激しく行き交い、歩けない。踏み固められた細い道を歩いて行く。「ごめんなさい。先に失礼します。雪道でたいへんなことになってしもうて」と、おばあさんが申し訳なさそうにあやまりながら擦れ違って行った。大きな通りに出る。立派なアーケードがあって、歩きやすくなった。両側に店屋がずらっと並んでいる。土曜日の昼だというのに人通りはほとんどない。この雪では買い物どころではないのだろう。その商店街を、物好きな2人がきょろきょろしながら歩いて行く。氷見と云えば鮮魚なのに、鮮魚店は見当たらない。氷見市役所前を過ぎた所で、鮮魚店を見つけた。店の中を覗いたが魚はあまり並んでいなかった。海が荒れて漁ができないのだろうか。
30分ほど歩いて氷見漁港に到着した。漁港のすぐ隣りに道の駅「海鮮館」がある。大きな駐車場には車がたくさん停まっている。建物の中にはお客さんがたくさんいるのだろうか。

大きな建物に入って右手に何軒も魚屋が並んでいた。カニが並べられている。大きなズワイガニが1匹2000円。まあまあ手ごろな値段だ。ハマチ、まぐろ、イカ、ホタテなどが並ぶ。店を一軒一軒見て回る。家の近くの大きなスーパーで見ている値段よりも高い。天然ブリと表示がある。小さな切り身に何と5500円の値段が付いている。「ええ、これは高いちゃ」とかみさんも声を上げた。「いや、氷見産天然ブリは最高級なのだ。どうだ買えるか」というのだろうが、氷見という名が値段を釣り上げてしまったように私には思えた。

店内の日本料理店で昼ご飯にした。どれも立派な値段が付いている。1200円の刺身定食を注文した。しばらくして女性が注文の料理を持って来た。「これは、天然ブリだから美味しいですよ」と力を入れて説明した。ブリの刺身が3切れ、マグロの刺身、タラの子をまぶしたタラの刺身が皿に盛ってあった。それにワタリガニの味噌汁が付いていた。上品な料理で美味しかった。しかし、食べ終わった私には何か物足りない料理に感じた。きっと、氷見の町に残るあの思い出が、そうさせているのだろう。