楡原から富山へ ラジオからは「富山県は朝から冬型の気象配置が強まり、海岸地方には強風波浪注意報が出ています。山間部では雪が降り続くでしょう」と天気予報が流れている。「冬の荒れる日本海が見たい。それも、ずっと前に見た高倉健の映画『海峡』にあった親不知の海岸の岩にぶつかっている凄い波を自分の目で見てみたい」と前々から思っていたのだ。今日は最初のチャンスとばかり、雪の中を出掛けることにした。スキーウエアーに身を固め、長靴を履いて家を出発。道は、夜に降った湿った雪が積もり、ぐしょぐしょになっている。長靴を履いて出たのは正解だったようだ。
国道に出る。融雪装置から流れる水を、車が勢いよく跳ね飛ばして、走って行く。雪国の国道は、融雪装置のおかげで、車にとっては大変走り易い道になったが、歩行者にとっては、ずぶ濡れになることを覚悟しなくてはいけない辛い道になった。「国道を歩いていて頭から水を浴び、大変だったよ」と言うおばあさんの話を思い出した。

楡原駅に到着。プラットホームにある待合室で列車を待つ。正月3日だからか、列車を待つ人はいない。午前9時発富山行普通列車に乗車。車内には20人ほどの客がいる。富山へ買い物に出掛けるのだろうか。
神通川に沿って列車は山を下って行く。しだいに周りの雪が少なくなっていくのが分かる。笹津ではとうとう雪がなくなってしまった。あれだけあった雪が、僅か1駅でなくなってしまうとは、改めて、自宅のある楡原の雪の多さに驚かされる。
列車が走る車窓からいつもは見える立山連峰も今日は厚い雲に覆われて見えない。時折舞う雪から、強い風が吹いていることが理解できた。
列車は富山駅に到着した。プラットホームは冷たい風が吹きぬけている。その中で、重い荷物を持った帰省客が列車を待っていた。私は40分近い待ち時間をステーションビルの本屋で過ごすことにした。本屋の富山県コーナーには面白そうな道歩きの本が何冊も並んでいる。発作的に3冊も買ってしまった。出費した5000円は痛いが、これからの旅人生活には欠かせない本になりそうだ。