水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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北海道を歩く Part2 羽幌から札幌へ

第3日 苫小牧から留萌を経て羽幌へ

 昨夜も、私は午後九時過ぎに寝てしまいました。いつものように、十二時過ぎに目が覚めたのですが、私を含めて三人程が寝ていただけで、若者たちのほとんどは、どこかで別の時間を過ごしていたようです。今日も、午前五時過ぎには目が覚めてしまい、部屋を抜け出すことになりました。もちろん、朝食も忘れずに持ちました。

 さっそく、風呂へ出掛けました。今日は、昨日と違って、ロビーに人が何人も座っています。風呂にも、十人ほど先客がいました。やはり、仙台から乗船した人は、かなり多かったようです。裸になり、ドアを開けて風呂場へ行きました。少し混雑しています。空いている蛇口を見つけ、シャワーのコックをひねりました。なぜか、水が出ません。寝ぼけ眼でやっているからでしょうか。昨日と同じようにやっているのですが、どうしても水が出ないのです。その時、少し離れた所にいたおじいさんが、私に向かって何か言っているのに気が付きました。「そこじゃなくて、ここをひねって」
蛇口を指差して親切に教えてくれています。やっと、バルブの操作が分かり、水が勢いよく飛び出しました。やはり、寝ぼけ眼でいるようです。私も、かなり老人になったようです。
 窓から見える海は、霧がかかって見通しはよくありませんが、ほとんど波はなくて穏やかです。昨日のように、湯船の水も揺れていません。
「仙台から乗られたのですか」
先程親切にしてくれたおじいさんに話掛けました。人と話をするのは、これが二回目です。
「ええ、そうです。北海道へ、ばあさんと二人で旅行に行くのです」
話好きなようで、どんどん会話が続きました。仙台港の近くで、工場を経営している社長さんでした。
「名古屋は、暑いと聞いていますが」
「ええ。出航の時にも、三十五度ありましたよ」
そう答えると、「うーん」とおじいさんはうなったまま、返事が返って来ませんでした。

 今朝も、インスタントラーメンとお粥で、朝食を済ませ、八時過ぎ、部屋へ帰りました。今日は、十時四十分が下船なので、若者たちは起きていました。彼等とは、これまで挨拶も会話も交わしていません。こちらから声を掛ければ、気軽に答えてくれるとは思うのですが、どうも年齢の差が気になってしまって、その一言が出ないのです。私は、再び本を持って、ラウンジのテーブルへ戻りました。ラウンジでは、ピアノの生演奏が始まりました。昨日の午後聴いたときより、少々演奏の乗りがよくないようです。家族連れで食事をする人、コーヒーを飲む人、ゲームを楽しむ人など、ラウンジはごったがえしていて、演奏を聴いてもらう雰囲気ではありませんでした。

 午前十一時、船は少し遅れて苫小牧港に入航しました。今日の目的地、羽幌に向けて出発です。フェリー埠頭から、苫小牧駅行のバスがあるとアナウンスがありました。発車時刻まで、ほとんど時間がありません。急いでバス停に向かいましたが、残念ながら、バスは発車した後でした。次のバスまで四十五分あります。あきらめて待つことにしました。隣に、三人の外国人がリュックを背負って時刻表を見ています。何かしゃべっていましたが、彼等はバスに乗らないで歩いて行くようです。私も北海道へ歩きにやって来たのだから、彼等に付いて行ってもいいのですが、「私は羽幌から歩けばいいのだ」と自問自答して、歩くのは止めました。
 そこへ、船で同室だった三人の若者たちが、大きなリュックを背負ってやって来ました。
「やあ、同じバスで行くのですか。部屋では何も話ができませんでしたが、私のいびきはうるさくありませんでしたか」
やっと、私の方から若者たちに声を掛けることができました。
「いえ、静かでしたよ」
若者が答えました。日頃から「いびきがうるさい」と奥さんから言われていましたので、それを聞いてホッとしました。彼等の今回の旅行の目的を聞ききました。
「どこへ行くの」
「大雪山を登りに行くのです」
元気な声が返って来ました。私よりも大きなリュックを背負っている訳が分かりました。
「クマ避けの鈴は持ちましたか」
「もちろん、みんな、それぞれ一つずつ持っています」
一番背の高い若者が、リュックのポケットに入っているカウベルを鳴らしてくれました。「天候も良くなりそうだから登頂できるといいですね」と私は思いました。
 午前十一時四十五分、札幌行高速バスが発車しました。途中で、歩いて出発した外国人を、バスが追い抜きました。彼等がにこやかな顔でこのバスを見ていた姿は、とても爽やかに感じました。苫小牧駅は、僅か十分で到着しました。

 苫小牧から「札幌行」普通列車に乗りました。列車の中で、駅弁を食べました。札幌で、特急旭川行に乗り換え、午後三時、深川に着きました。深川から留萌行に乗車するのですが、待ち時間が一時間二十分あります。駅の待合室で過ごすことにしました。待合室のテレビが、サッカーを流しています。サッポロFCという地元のチームが戦っています。若者たちが、食い入るように見ていました。サッポロFCは、だんだん調子が出てきて、二対一で逆転勝ちです。若者たちは、手を叩いて大喜びです。北海道へ来ているので、私も北海道のチームが勝って同じようにいい気分になってしまいました。私は単純な男のようです。

 留萌行の改札が始まり、ホームへ向かいました。NHKテレビで有名になった「明日萌駅」と「SLすずらん号」の宣伝パネルがいろんな所に並べてあります。ちょうどそこへ、SL機関車が黒い煙を吐いてやって来ました。「すずらん号」です。列車から、たくさんのお客が降りてきました。「すずらん号」が、一日一回、深川と留萌の間を往復していると書いてありましたが、その姿を、実際に見ることができました。何だか、幸先のよい旅行になりそうです。

 午後四時二十二分、「増毛行」が一両編成で出発しました。車内は、閑散としています。SLブームはありますが、やはり地方鉄道は、高校生か老人しか乗らないのです。採算は全くあわないようです。列車が停まる小さな駅も、大きな駅も、駅員はいなくて、ホームや駅舎も朽ち果て、やがて廃線になるのを待っているように感じました。ただ一箇所、「明日萌駅」で有名になった「恵比寿駅」は、大勢の観光客で賑わっていました。しかし、その観光客もほとんどは車でやって来ています。皮肉な現実を抱えながら、列車は明日萌駅を発車しました。

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 午後五時過ぎ、列車は、留萌駅に到着しました。ここは、昨年訪れているのでよく分かります。まずは、駅前の観光案内所へ行きました。案内所は、昨年と同じように観光客で賑わっていました。カウンターの女性に、羽幌行のバス乗り場を聞きました。
「すぐ前のバス停から、五時四十五分発遠別行に乗車してください」
女性は時刻表を調べて、教えてくれました。何日か後に行くことになる雄冬岬の民宿も、わざわざパンフレットをコピーしてくれました。職員が親切なのには、びっくりしました。

 午後五時四十五分、定刻通り、バスは発車しました。羽幌まで海岸沿いの道路を、バスは走って行きます。この道は、昨年一度バスで通ったことがあり、懐かしい気持ちになりながら、車窓の景色を眺めていました。明日は、この道を歩くのです。ほとんど歩道が付いていて、安全に歩けそうなのでホッとしました。なつかしい風車の姿が、目に飛び込んできました。風がないのか、風車は回っていませんでした。一年前、あの風車からもらったエネルギーが、よみがえってくるような感じがしました。

 午後七時過ぎ、羽幌に到着しました。辺りは、かなり薄暗くなり、少し小雨が降っています。バス停のすぐ横に、「グリーンホテル」という看板が光っています。昨年泊った宿とは違いますが、入口の戸を開けてフロントへ行きました。
「夕食は無理ですが、それでもよければ」
眼鏡をかけた優しそうなお上さんが、部屋の鍵を渡してくれました。行き当たりばったりの旅ですが、今晩の宿は、あっさり確保することができました。
 荷物を整理し、すぐに食事に出掛けました。この町へ来たら、どうしても、もう一度訪れたいと思っている飲み屋があります。去年ふらっと立ち寄った店です。その時のことです。

「宗谷岬から歩いて来ました」
私がここまでの旅の様子を話すと、その店のお上さんは、私のことにすごく興味を持ってくれました。
「私が撮った写真があるのですが、見てくれますか」
お上さんは、富良野近くのお花畑で撮った写真を何枚か見せてくれました。その中の一枚が、構図といい、色といい、素晴らしく、感激してしまいました。
「どこかの写真のコンクール出したら、入賞すると思いますよ」
盛んに勧めた記憶があります。そのお上さんの息子さんが、自転車で日本一周をしたという話まで聞かせて貰い、楽しい時間を過ごしました。
あの夜は、近くの川で灯篭流しがあり、花火も上がり、旅をする者にとって、心に残ることがたくさんあったのですが、私には、北海道旅行をこの地で締めくくる最後の夜になったことが、一番の思い出になっていたのです。

 道の曲がりなどすっかり忘れてしまい、なかなか目当ての飲み屋を探すことができません。裏通りに入った所だったということを思い出し、細い路地を歩いて行くと、懐かしい風景に出会いました。うどん屋の向い側に、「世界樹」という飲み屋がありました。名前は覚えていませんでしたが、何となく一度来たような気がしました。店の戸を開け、中へ一歩入りました。確かにこの店です。店の奥にカウンターがあり、その奥に調理場があり、お上さんが一人座っています。一年前の光景が、はっきりよみがえってきました。今晩も昨年と全く同じ風景でした。

「今晩は」
声を掛けると、奥からお上さんが出てきました。
「久し振りです。一年振りですが、覚えていますか。去年の夏、道を歩いていてこの店に立ち寄った者です。息子さんが日本一周したとか・・・」
お上さんも私のことを思い出したようです。
「ああ、思い出しました。いやー、お元気でしたか。懐かしいですね。そうそう、あの時の写真、コンクールで賞を貰ったのですよ。そこに記念として飾ってあります」
お上さんは、嬉しそうに飾ってある写真を指さしました。何だか一年経ったのが嘘のようで、北海道を歩いていた時のことが、ぐんぐんよみがえってきました。
「また、北海道へ歩きにやって来ました。この羽幌から、今年は出発です。小樽まで行こうと思っています」
「そうですか。私は、貴方の話を聞いてから、とても羨ましくなり、今年の春、一人で旅行に出掛けてしまいました」
私の話がきっかけになって、お上さんが一人旅をしたことに嬉しくなりました。
「そうそう、今晩は花火大会があります。いい日に羽幌の町へやって来ましたね。八時くらいから始まりますから、見て行かれたらいいですね」
その話を聞いて、私は、羽幌の町とは、不思議な縁で結ばれているような気がしました。
花火の上がる音が聞こえ始め、十五分ほど経ちました。まだ、この店で飲んでいたい気持ちもありましたが、花火が終わりそうです。
「気を付けて旅を続けてください。お元気で」
お上さんの声に送られて外へ出ました。
小雨がしとしと降っています。人通りのない羽幌の空に、「ポーン、ポーン」と単発の花火が上がっていました。やがて、クライマックスを迎えましたが、都会の花火に比べると、あまりにも呆気なく終わってしまいました。

[ 2012/08/04 05:45 ] ふらり きままに | TB(0) | CM(3)
羽幌の世界樹?!
はじめまして!
世界樹、ありましたか?!
どうしても行きたくて、ネットで検索しても出てこないし、役場に問い合わせても「ありません」の返事で困っていました。
お店に寄られたのは今月ですか?
[ 2012/08/21 09:27 ] [ 編集 ]
Re: Re: 羽幌の世界樹?!

私が「世界樹」を訪れたのは、今から10年以上も前のことでは、今は、閉店してしまったようです。
[ 2012/08/21 15:12 ] [ 編集 ]
ありがとうございます
レスありがとうございます。
閉店してしまったのですね……残念です。
でも情報ありがとうございました。
世界樹は25年以上前に主人がお世話になっていたようで、久々に北海道へ来る機会があったので立ち寄ろうと計画していました。
(私も1度行ったことはあります)
残念でしたが、こちらで世界樹の話題に出会えて嬉しかったです。
[ 2012/08/28 00:40 ] [ 編集 ]
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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