水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

団塊世代の親父のブログです。
水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記 TOP  >  ふらり きままに >  北海道を歩く Part2 羽幌から札幌へ

北海道を歩く Part2 羽幌から札幌へ

第7日 浜益から厚田へ

 午前五時半起床。朝早い浜辺へ行きました。人影は疎らですが、波と遊んでいる子どもがいました。今日は、ここから厚田村まで行く予定です。
「長いトンネルもありますが、歩道があるから充分歩いて行けますよ」
民宿のご主人の話です。厚田村までは、三十キロ近くありますが、途中の濃昼(ごきびる)まで歩いて行けば、バスもあるというのです。思い切って歩いて行くことにしました。

 六時半、用意してもらった朝ご飯を食べました。澄まし汁の中にウニが入っていることにびっくり。この地域は、どうやらウニの産地のようです。一泊二食五〇〇〇円の宿泊料を払うと、領収書をくれました。コンピュータを使った手作りの領収書でした。
「コンピュータを使っているのですね。インターネットホームページもあるのですか」
「今挑戦中です」
奥さんから返事が返って来ました。この民宿の夫婦がいろいろ模索している様子が、こんなところからも伝わってきました。

 七時少し前に民宿を出発。空には薄雲が広がり、風も吹いて、とても歩き易い天候です。しかし、道路の方は、予想と反して、三十分ほど歩いた所で白い路側帯の道路に変わってしまいました。しかし、幅は一メートル以上あるので少し危険は感じますが、歩き続けることにしました。ここで歩くのを中止しても、次のバスは午後にしかありません。歩くしか方法がなかったこともありました。

 一時間近く歩いて、小さな海水浴場のある毘砂別に到着しました。ここは、旧道と新道の別れる所です。地図によれば、旧道を歩いても濃昼に行けることになっています。トンネルがない旧道を歩こうとすると、掃除をしていた村の人たちに呼び止められました。
「どこへ行くのですか」
「濃昼へ行きます」
「この道は今工事中なので、濃昼へ行くことはできんよ。この先に山越えの道もあるけど、そこも工事しとるし、新道を通って行くしかないね」
厳しく言われてしまい、あきらめて、再び新道を歩くことにしました。
道は海岸から離れて、次第に山道になっていきます。路側帯の端を、一歩一歩踏みしめながら上って行きました。時折、大きなエンジン音を響かせて、トラックが脇を通過して行きます。とても心細い気持ちになりながら歩いて行きました。身体の周りを、小さな虫が飛び交っています。よく見ると、アブです。帽子で追い払いながら歩きましたが、山越えをしている間に、皮膚を露出していた腕や顔や首など、何箇所も刺されてしまいました。

 峠を上り出して一時間、トンネルの入口が見えて来ました。送毛トンネルという二〇〇〇メートル近くあるトンネルです。今までにもトンネルを歩いたことはありましたが、広い歩道が付いていたものばかりでした。こんなに長いトンネルは初めてです。いよいよ、トンネルの入口に来ました。見ると五十センチほどの細い歩道が両サイドに付いています。何とか歩いて進めそうです。
「自転車の人には、絶対に歩道を歩くように言っているのです」
民宿のご主人の話を思い出しました。トンネルの壁に時折肩を触れさせながら、細い歩道を歩いて行きました。
「ゴォー」
すごい音が響いてきます。車がトンネルの中に入って来たようです。反対車線を、猛スピードで乗用車が通過して行きました。再び、すごい音がしています。今度は、先ほどの音とは比べ様のない大きな音です。しかも、後ろから私に近づいて来ます。恐ろしさで、とても歩ける状態ではありません。壁にへばりついて、音が通過して行くのを待ちました。やがて、大きなトレーラーがすぐ脇を通過して行きました。
本当に心細い気持ちになりながら、トンネルを進んで行きました。細い歩道に積もっている土に自転車の轍が残っています。このトンネルを通過して行った人の跡です。何だか、勇気付けられる気持ちがしました。轟音に耐えながら二十五分、ついに、トンネルを通過することができました。出口で休憩しながら飲んだお茶は、「やったー」と「もうこりごり」という気持ちが混ざった複雑な味でした。

 img8081.jpg

 その後、更にトンネルを二つ通り抜け、十時半、濃昼港に到着しました。バス停が見えます。さっそく、バスの時刻を見に行きました。「濃昼からはたくさんバスが出ているから」という話でしたが、時刻表は、空欄の所がほとんどでした。しかし、幸いにも、十一時三十分発の札幌行急行バスがあります。そのバスに乗車することにして、港を散策することにしました。

 img8082.jpg

 小さな港は閑散として、カモメの泣き声が響き渡っています。心淋しい北の漁港という雰囲気が、辺り一面に漂っていました。桟橋の横に、魚の加工場のような建物があります。入口から中を覗くと、老人たちが、籠から魚を取り出して腹を裂いていました。エイやホッケなどの魚が見えます。突堤に行くと、若者が三人釣りをしていました。「朝からずっと釣っているけど一匹も釣れていない」という返事が返って来ました。遠くを見ると、港の横に海水浴場があり、少し人で賑わっているようです。時間もあるので、そちらへ行ってみることにしました。「濃昼海水浴場」という看板が出ています。砂浜はなく、岩場で何人か泳いでいました。

 img8083.jpg

 浜茶屋で氷を注文し、この辺りのことについて、浜茶屋のおじさんに話を聞きました。
「以前、そこのトンネルが崩れて、乗用車が生き埋めになったのです。今、新しいトンネルを掘っています」
何年か前に、大きな事故があったことは知っていましたが、ここが、その場所だと聞いて、改めて周りの景色を眺めました。遠くに修理中のトンネルと見上げるような絶壁が聳えていました。

 十一時三十分、札幌行バスは濃昼を出発しました。険しいトンネルが幾つも続き、美しい海岸線をバスは走って行きます。十分ほどで、厚田村役場前にバスは到着しました。村の中心地のようで、たくさんの家が立ち並び、賑わっているようです。商店街を通って港へ行ってみました。港には、白いテントが幾つも張られ、魚を販売しています。朝市をやっているようです。

 img8086.jpg

 「おじさん、おいしいタコを買っていかんかね」
おばあさんに声を掛けられました。太いタコの足が、一盛四〇〇円と値札がついていました。ホッケ、カニなどいろいろな魚が、安い値段で並んでいるのにはびっくりしました。海水浴に来た人たちが、おみやげとして買い求めて行くようです。

 海水浴客で賑わう浜辺を見た後、今日の宿を探しに、再び商店街の方へ行きました。「戸田旅館」という看板が掛かる旧くて大きな旅館が建っています。ガラガラと戸を開けて玄関を入ると、大きな屏風が飾ってあります。由緒ある旅館のようです。奥からお上さんらしい人が出てきました。部屋は空いているということで、今日は、この旅館に泊まることになりました。奥にある部屋へ案内されましたが、床の間には、立派な掛け軸が吊るされ、その前には、大きな鷹の剥製が置かれていました。隣の部屋には、二羽の丹頂鶴の剥製が置かれています。そうとう歴史のある立派な旅館だと云うことを、置いてある品々から感じました。

 昼ご飯を食べに出掛けることにしました。商店街にある喫茶店風の感じのよい店を見つけ、そこで食事をしました。弁当というメニューがあり、それを注文しました。カウンターを見ると、厚田村を紹介したパンフレットが置いてあります。手にとって中を読んで行くと、歴史を彩る先人たちという中に、佐藤松太郎という人が紹介されています。
「明治三十三年、五万円をかけて、現在の戸田旅館を隠居家として建てた。このほか、彼は困っている人には思いやりも深く、公共のためには、多額の寄付もしたりした」と記述されていました。今日宿泊する戸田旅館の歴史を少し知ることができ、偶然ながら、その旅館に泊まることに旅の不思議さを感じました。

 その後、この地域のことを紹介してもらおうと役場へ出掛けました。
「厚田村郷土資料室がすぐ上の公園の中にあります」
受付の女性が地図で説明してくれました。

img8085.jpg

 急な道を上って行くと、厚田の町が眺望できる大きな公園に着きました。風が強くなり、海はかなり荒れているようで高い波が立っていました。資料室はよく整備され、昔使われた漁具や子母沢寛、佐藤松太郎、戸田城聖、吉葉山など、この村に貢献した人たちを紹介していました。

 img8084.jpg

 夕方、海岸へ写真を撮りに出かけました。浜辺には、今までいろいろな海岸で見てきたと同じようにテントが張られ、多くの人たちが、波打際で遊んでいました。今日は雲が多く、水平線に沈む夕日は、見られそうもないようです。私の旅も、そろそろ終盤に近づいてきたように思いました。明日は、石狩まで行くことになりそうですが、今日のような道なら、バスに乗って移動しようと思いました。

 旅館に帰りました。食事は部屋で食べます。お上さんが料理を運んできました。刺身とホッケの焼き物、フキと茄子の煮付け、魚の味噌汁など上品な料理が並びました。歴史ある旅館の一室で味わう夕食はまた旅のよい思い出になりました。





[ 2012/08/08 08:10 ] ふらり きままに | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム