水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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初冬の北陸路・山陰路 放浪の旅 3

北陸路の旅

11月19日(水) 加賀温泉~東尋坊~敦賀港


 目が覚めた。無事朝が迎えられたようだ。時計は午前4時を指していた。旅人にはそれはいつもの時刻だった。老人になると目覚めが早くなるというが、旅人はすっかり老人になってしまったようだ。ラジオのスイッチを入れる。ラジオ深夜便「こころの時代」の番組が流れていた。この日は小児科の先生の話だった。きっといい話だったのだろうが、ぼっと聞いていただけなので内容は忘れてしまった。これもいつものことだった。

 駐車場は暗いが、薄明かりに車が何台か停まっているのが見える。昨夜寝る時にあった車とは場所が違っていた。よく見るとエンジンが掛かっている車もある。「ジャスコ」へ買い物に来たのだろうか。ひょっとしたら旅人と同じように車の中で宿泊している人なのかも・・・。

 午前6時半、辺りは明るくなり始めた。そろそろ夜が明ける。寝袋をたたみ、座布団を片付け、椅子を元の位置に戻し、車内を掃除した。それから軽い体操をした。体調はよさそうだった。これからは、これを日課にしようと思った。

 今日はまず東尋坊へ行く計画だ。その前に朝食を食べ、顔を洗い、排泄をして朝の一仕事を終えなくてはいけない。「ジャスコ」で朝食の買い物ということも考えたが、なぜか行く気になれない。加賀温泉駅のすぐ近くにコンビニがあったことを思い出し、車を発車させた。

 コンビにはすぐ見つかり、サンドイッチと牛乳と新聞を買った。コンビニの駐車場に車を停め、車の中で新聞を読みながらサンドイッチを食べた。こんな形の朝食がこれからも続くのだろうか。トイレはJR加賀温泉駅の公衆トイレを使用した。なぜかトイレにトイレットペーパーがない。入口にティッシュペーパーの自動販売機が設置してある。「トイレットペーパーは自分の物を使え」というのだ。「道の駅」はどこもきちんとトイレットペーパーが設置してある。なぜ「JRの駅」はトイレットペーパーが設置しないのか全く理解できない。

 午前7時半出発。「東尋坊は、海沿いの道をひたすら西に走れば着ける」という大雑把な計画で、とにかく車を走らせた。近くに漁港がありそうな雰囲気になり、やがて道が細くなり、行き止まりのような感じになった。「どうも袋小路に迷い込んだな」と思ったら、いきなり視界が開け小さな漁港に到着した。「橋立漁港」という名前と「加賀漁業協同組合」という看板の掛かった建物が見えた。少し散策する。堤防には釣人が何人かいた。その中に中年の女性がいる。様子からすると1人で釣りにやって来ているようだった。「何か釣れますか」と声を掛けと、「餌ばかり取られて少しも釣れないの」と返事が返って来た。その時、当たりがあり、小さな魚が糸に付いて上がって来た。メバルだった。「やあ、釣れましたね」というと「今日はアジを釣に来たのだけど、まあ、これでもいいか」と女性は上手に魚を針から外していた。旅人は時代も変わったなあと思った。

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 漁港をあちこち見て回った。面白い建物があった。家の下が桟橋になっていて、船を横付けできるのだ。船から下りれば家の玄関という面白い構造なのだ。そういう家が何軒も並んでいる。京都の日本海沿岸にある「舟屋」という建物に造りが似ていることに気が付いた。今回の旅行では「舟屋」をぜひ見たいと思っていたのだが、こんなに早くそれに似た建物を見ることが出来、嬉しくなった。

 橋立漁港から少し走った所に景色のいい岬があった。断崖絶壁の岬は公園になり遊歩道も設置されていた。「加佐ノ岬」という表示がある。季節のいい時期にはたくさんの人がやって来るのだろう。驚いたのは、その断崖に生えている松が、あちらこちらで伐採されていたことだ。どうやらマツクイムシの被害で枯れてしまったもののようだ。枯れた松は全て切り倒すしかないのだろうか。この日も松を伐採するチェーンソーの音が響いていた。  

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 最近聞いた話だが、マツクイムシの被害が急速に広がっているそうだ。特に手入れをしていない松林の被害が多いそうだ。このまま進むと有名な松林も消えうせてしまう恐れがあるそうだ。富山湾にある雨晴海岸の岩の上に生えている有名な松がある。先日、能登半島へ出掛けた時にその岩を工事していたことを、思い出した。ひょっとしたら、あれはマツクイムシ対策をしていたのかも知れないと思った。「加佐の岬」の切り倒された松が並ぶ光景は、自然保護という言葉を空しく感じさせた。

 「東尋坊」を目指して車を走らせた。やがて「東尋坊」という案内板も見えるようになり、もう迷わないで到着できそうだ。そういえば、2年前に、この辺りでスピード違反の検問に引っかかったことを思い出した。北海道へ自動車で出掛け、北海道から敦賀までフェリーに乗り、敦賀から富山へ帰る途中だったのだ。気分よく走っていたら、いきなり赤旗を持ったお巡りさんが飛び出してきたのだ。「何だろう」と思っていたら、旅人に「止まれ」と合図を送っているのだ。旅人は、まだ免許取立てで、その事情がよく分からなかった。とにかく停車したら、「はい、15kmオーバーです。車を降りて、こちらへ来てください」と事務的に言われ、スピード違反の書類にサインしたのだった。初めての交通違反だった。その時のことを思い出しながら走って行くと、検問に引っかかった所を通過したようだった。「えっ、こんな道が40km制限」と驚くような広い道だった。それに気が付かないで走っていたのだ。今回もスピードの出し過ぎには注意しようと、旅人は気を引き締めた。

 「東尋坊」の駐車場に到着した。公共の駐車場は有料だが、売店の駐車場は無料である。もちろん旅人が停めたのは売店の方である。車を降り歩いて行くと、売店の店員さんが出て来て「どうぞ店の中を歩いて行ってください」と案内してくれる。もちろん断ることはできない。チラチラ商品を眺めてから「また後で」と声を掛けて外へ出た。

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 「東尋坊」の有名な断崖はまだ先である。そこへ行くまでの狭い道には、商店がずらりと並んでいた。驚いたのは、平日なのに道を歩いている人が、たくさんいることだった。ちょっとした賑わいになっている。「お客さん、カニを買いませんか。安いですよ」店の人たちの掛け声にも、並んでいる商品にも張りがある。景気はかなり回復しているように感じた。土産物の主流派は、何といっても越前カニだった。それにしていい値段が付いていた。こんな高いカニを土産に買う人がいるのだろうか。


 断崖の所へ出た。20人ほどのグループが記念撮影をしていた。あちらこちらに見学している人がいる。観光船も人をたくさん乗せて走っていた。不景気風は、本当にどこかへ行ってしまったように思った。断崖へ通じる道に、自殺者に自殺を思いとどまるように呼びかける標識が立っていた。「命の電話」という公衆電話ボックスも設置されていた。死ぬ前にだれかに電話をして、思いとどまってもらおうというものだ。やはりここは今でも自殺の名所になっているのだ。飛び込めば間違いなくあの世へ連れて行ってくれそうな断崖が聳えている。自殺者が年間三万人を超えているというから、何人かは、ここで命を亡くしているのかも知れない。

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 「東尋坊」を後にして越前海岸を走り続ける。狭い海岸の道には民宿が並び、店の前ではカニを茹でる湯気が上がっている。冬の越前海岸へカニを食べに、たくさんの観光客がやって来ているのだろう。時刻は12時。そろそろどこかで弁当を買って昼ご飯にしなくてはと思った。しばらく走るとコンビニがある。さっそく車を停め、弁当を買う。500円也。立派な幕の内弁当だった。「どこか景色のいい海岸で食べよう」と再び車を走らせた。 

 漁港が見えて来たので、そこで食べることにした。港で夫婦連れが釣りをしていた。魚は釣れているのだろうか覗きに行く。サビキでアジを釣っていた。釣れていのは、生半可な数ではなかった。バケツから溢れるほど、アジが釣れていた。「大漁ですね」と声を掛ける。「ええ、あまりの数にこちらも驚いているのですが、アジが群れているのが見えるでしょう」と親父さんが海の中を指差した。投げ入れた餌の周りには、アジが真っ黒になって群れていた。「もう十分に釣ったから竿を収めて帰ります」と親父さんは言った。「アジはどうやって食べるのですか」と聞くと「やはり、空揚げですかね。しかし、こんなにたくさんは食べられないから、近所の人に配るのが大変ですわ」と奥さんは笑顔で話した。仲のいい夫婦だった。夫婦連れも去り、静かになった港で弁当を食べた。カモメが数羽、堤防に残されたアジを突付いていた。
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 再び越前海岸を走る。狭い道路には小さな民宿が並び、店先では湯気が上がっていた。ここへやって来る客は関西や中京方面からの人たちが多いのだろう。そんなことを考えながら走っていると、「この先露天風呂あり」という看板が、目に飛び込んで来た。昨日は風呂に入っていなかったので、すっきりしたい気分だった。「日帰り入浴が出来るかも」と期待しながら車を走らせた。「露天風呂あり」という看板を出していたのは「漁火」という日帰り入浴施設だった。入浴料400円を払って中へ入った。こぢんまりとした風呂が三つあった。露天風呂からは青い海が見え、海を見ながら入る風呂は最高だった。海には白波が立っていた。風が強くなってきたようだ。汗を流してさっぱりした気分になった。こうした形で、1日に1度は風呂に入ろうと旅人は思った。時刻は午後3時。今日はどこに寝場所を見つけるのだろうか。

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 越前海岸を敦賀に向けて車を走らせる。辺りは暗くなり雨も降り出した。天候がだんだん悪くなって行くようだ。河野海岸有料道路(520円)から国道8号線に入り、しばらく走ると敦賀だった。国道脇のコンビニを宿泊地にするということも考えたが、気が進まない。「どこかないか」考えていて思い出した場所があった。敦賀港の長距離フェリー埠頭だ。広い駐車場や売店もあった。そこへ行くことにした。

 「フェリー埠頭」という道路標識が見える。国道8号線から分かれ、トンネルを抜けると以前来たことのあるフェリー埠頭だった。大きなフェリーが桟橋に停まっていた。北海道へ行くフェリーのようだった。今晩はここを宿泊地とすることに決めた。再び、夕食を買いに車を走らせ、国道沿いにあるコンビニで弁当とビールを買う。本当に車というものは便利なものだ。

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 戻る時に新しい発見をした。フェリー埠頭のすぐ横に釣り桟橋があるのだ。雨の中でも、たくさんの人が釣りをしていた。広い駐車場もあり、トイレも設置してあった。「京都」「名古屋」「岐阜」といったナンバープレートの車が10台近く停まっている。今日の寝場所は、フェリー埠頭からここに変更した。多くの釣り客と一緒に泊まる経験は初めてだった。夜釣りを勉強できそうだと旅人は思った。

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 ここは、敦賀市が建設した本格的な釣り桟橋で、駐車場、トイレ、水道、自動販売機、ごみ箱などが設置され、きちんと掃除も行き届いていた。釣り客は中年の男性がほとんどだが、女性も何人かいた。ねらいは「アジ」だった。サビキを入れた籠を電気浮につけ、遠投していた。獲物が掛かれば浮が水中に沈むという仕掛けになっている。サビキ釣りを楽しんでいた家族連れのバケツには、小さなイワシがたくさん入っていた。「アジが釣れないのが残念です」と奥さんが話してくれた。大きな網を用意した親父さんがいたが、バケツの中にはカワハギが2匹泳いでいるだけだった。すっかり暗くなり、雨も強くなって来たので、釣り客たちは竿をしまい始めた。どうやら今晩の釣りはこれでおしまいになるようだった。旅人も、車に戻り夕食にすることにした。

 弁当とビールでいつもの夕食が始まった。ラジオを聞きながら、薄暗い明かりの下で食べる夕食は、やはり、寂しい。明るい電球の下で、家族とワイワイ言いながら食べる夕食が一番だと思った。釣り客たちはどんな食事の仕方をしているのだろか。見に行くことにした。私と同じように、薄暗い明かりの下で食事をしている人が多いようだが、違った人たちもいた。簡易のランプを付けて車の中を明るくし、座席を倒して宴会をしている。すき焼きでもやっている雰囲気だった。車が大きいとああいうことも出来るのだ。明かりが漏れないように目隠しのカーテンを引いている車もある。暗い中で明かりを付ければ車の中が丸見えになってしまう。そのためにいろいろ工夫していることが分かった。「さすがに車を使って夜釣りに出掛ける人たちは、よく研究している」と旅人は感心するのだった。

 午後8時、夕食が終わり、アルコールも回り眠気が旅人を襲ってきた。旅人はいつものように座席を倒し、寝床を作り寝袋に潜り込んだ。外は雨が激しく降っていた。明日は一日中雨なのだろうか。天気がよければ旅人も釣りに挑戦してみようと思った。この車には釣り道具を積んでいたのだ。

 ぐっすり寝込んだ夜中、あまりの痒さに目を覚ました。何と耳元では蚊の羽音がしているのだ。どうやら蚊に腕を刺されたようだ。それも二箇所。まさかこの時期に蚊に食われようとは、予想だにしていなかったことだった。旅人はあまりの痒さに、飛び起き、ごそごそと荷物をひっくり返し、その中から薬箱を取り出し、ムヒを見つけて塗りつけた。旅人が痒さに慌てふためいている様子を見ていた人がいたら、きっと笑い転げただろう。日本海を南に下って来たので、気候が暖かくなったということなのだ。






[ 2012/11/28 05:11 ] ふらり きままに | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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