水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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初冬の北陸路・山陰路 放浪の旅 6

山陰路の旅

11月22日(土)  丹後~城之崎~鳥取砂丘


 午前5時起床。雨は降っていないが、強風が吹き荒れている。駐車場にトラックが5台、自動車も4台ほど駐車していた。やはりここは、ドライバーの貴重な寝場所になっているのだ。用を足しにトイレに行く。突然、障害者用のトイレが開き、中年の親父が出て来た。トイレを寝場所にしていたように旅人には思えた。障害者用トイレは広いし、風も吹かない。寝場所にはいい所かも知れない。用を足し、車へ戻る。寝床を片付け、車を掃除した。体調はよさそうである。お湯を沸かし、熱いコーヒーを入れる。その後、朝食のうどんも作った。自炊も板について来たようだ。

 旅人には、一つ困っていることがある。それは、洗濯だった。着替えを4日分持って旅に出たのだが、もう底をついていた。どこかで洗濯場所を見つけなくてはいけないのだ。これは難しい課題だった。大きな町で、コインランドリーを見つければいいのだろうが、その気もなかった。「道の駅」で洗濯して、車の中に洗濯物を干して走ればいいのだ。北海道を旅行した時に、そういう車を見たことはあったが、それを実行する勇気を、旅人はまだ持ち合わせていなかった。この難題を解決する一つの方法は、旅館に宿泊することである。旅館で洗濯をすればよいのだ。「今夜は旅館に宿泊する」と旅人は決めた。久しぶりに畳の上で寝られそうである。今日は、城之崎から余部鉄橋の辺りを走ることにしていた。宿泊地はその辺りになりそうだ。

 午前8時出発。城之崎温泉に向かって車を走らせた。道路標識に従って国道から脇道に入った。道は狭い山道になり、対向する車もない。「道を間違えたのではないのか。この先、行き止まりになるのではないのか」という心細い気持ちになるが、対向車が現れ、ホッとする。

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 午前9時、城之崎温泉に到着した。狭い温泉街の道を、駐車場を求めて車を走らせた。通りは、たくさんの観光客が歩いていて賑わっている。考えてみれば、今日は土曜日、しかも3連休の始まりの日だった。観光地が賑わうのも無理のない話だ。

 かなり進んだ所で公営の駐車場を見つけた。駐車場に車を停め、街中を散策することにした。お宮さんの横に小さな市場があり、立派なズワイガニが並んでいた。この辺りで松葉ガニと名前を代えている。「今朝、香住港で上がった新鮮なカニだよ」親父さんが景気のいい声を上げている。1匹3000円という値段のものもある。それを何匹も買って行く観光客がいた。城之崎の冬のお土産は、ズワイガニなのだ。

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 熱いコーヒーが飲みたくなり、喫茶店に入る。入口は狭かったが、店の中が広いのに驚いた。たくさんのテーブルが並んでいる。朝が早いためかお客は1人もいなかった。コーヒーを注文した。眠そうな顔をしたマスターが、コーヒーを入れ始めた。カウンターにはブランデーやウイスキーの瓶がずらりと並んでいる。どうやらこの店は、夜はスナックになっているようだ。温泉宿を訪れた客たちが、飲み直しにここへやって来ているのだ。昨夜もたくさんの客で賑わっていたのだろう。

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 駐車場に戻る。すぐ横に「たんちょうの湯」という温泉がある。旧い歴史のある温泉で、城之崎温泉の源泉になっているという説明がある。料金を払えば入浴できるというので、入っていくことにした。城之崎温泉にはこうした温泉が何箇所もあって、すべての温泉に入浴できるチケットも販売されているという。4年前ここへやって来た時に、「いい銭湯があるから入って来なさい」と宿屋の主人に勧められ、入りに行った温泉もその中に含まれているようだ。朝早いというのに「たんちょうの湯」はたくさんの人で混み合っていた。昨日から泊りに来ているお客さんが温泉めぐりをしているのだろうか。無色透明で、サラッとしているお湯だった。すっきりした気分になり温泉を出た。着替えが新しければもっと気分がよくなったのだろう。今日は洗濯を絶対にしなくてはいけないと旅人は思った。

 余部鉄橋に向けて車を発車させた。海岸沿いの険しい道を走る。昨日、丹後で走った道に似ていた。カーブはスピードを落として慎重に曲がった。車が追い着いて来たら、「どうぞお先に」と道を譲った。道の所々に展望台が設けてある。断崖を走る道なので、景色がいいのだ。海には高波が立っていた。海岸線がよく見える所で車を停めた。茶色に枯れた浜辺の草と高波が押し寄せる海岸。こういう風景が山陰の冬のイメージなのだろう。

 コンビニを見つけて昼食を買う。いなり寿司にした。どこか港があればそこで食べようと、再び車を走らせる。香住町に入る。「香住漁港」という案内標識を見つけ、そこへ行くことにした。大きな港だった。この辺りでは一番大きな漁港だという。「香住港で上がったカニだよ」と市場の親父さんが叫んでいたのを思い出した。

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 漁港の中に漁協が運営する市場があった。広い駐車場には車がびっしり並んでいる。中を見て回ることにした。小さな魚屋が狭い通路を挟んでずらりと並んでいた。その中をお客さんがぞろぞろ歩いている。店先に並ぶのは松葉ガニだ。オスは1匹1000円台から、メスは1匹300円台からある。城之崎温泉で見たものよりうんと値段が安い。湯気を上げているカニもある。そのまま食べられそうである。大きなイカもある。富山では「観音イカ」というのだが、「樽イカ」という名前で売られていた。1匹5000円の値札が付いている。市場の中には、威勢のいい掛け声が響いていた。外は強風が吹き荒れているのだが、山陰の魚市場は元気だった。

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 香住漁港を出発した。余部鉄橋はここからすぐ近くにある。列車が41mもある高い鉄橋を走る風景が有名な所だ。強風が吹いて列車が転落したことがあり、それからは運転規制が行われるようになった。今日は強風が吹いているので、鉄橋を渡る列車は見られないかも知れない。余部鉄橋が見える所に来た。道路の淵に車を停める。4年前のことがはっきりと蘇って来た。今車を駐車しているすぐ横の田んぼの中で、カメラを構えて列車が通過するのを待っていたこと。雪が積もった小高い丘に苦労して上り、列車が鉄橋を渡っていくのをカメラに収めたこと。一生懸命に撮ったのだが、どれもピンぼけ写真だった。

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 しばらして、ゴーという音が聞こえて、2両編成の赤いディーゼル列車がトンネルから現れた。そしてゆっくり鉄橋を渡って行った。味わいのある風景だった。

 国道を、リュックを背負って歩いて行く人が見えた。何年か前の旅人の姿に似ていた。彼は、今日はどこまで歩くのだろうか。城之崎温泉辺りかな。

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 時刻は午後3時。「鳥取」という文字が道路標識に見えるようになる。「鳥取30km」。鳥取へ行けば、宿も苦労しなくても見つることができそうだ。このまま車を走らせることにした。スピードメーターが80kmを指している。高速道路並の速さだ。スピードの出し過ぎだが、車の流れはこのスピードなのだ。その理由は、制限時速が60kmなのだ。だからどの車もスピードを出しているのだった。鳥取県がハイスピードの県だということを初めて知る。事故は多くないのだろうか。

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 午後4時、鳥取砂丘に到着した。「鳥取砂丘」という案内板を見つけて寄り道したのだ。大きな駐車場に車を停めたのだが、ここは鳥取砂丘ではなく、鳥取砂丘を展望する丘の上の駐車場だった。ここから鳥取砂丘に行くには、リフトに乗らなければいけないとのことだ。以前ここへ来た時には、こういう施設はなかったから、最近できたのだろう。少し時間は掛かるが、リフトに乗って行くことにした。寒風が吹き抜ける中、10分間もリフトでじっとしているのは辛かった。もう少し厚着をして来るべきだった。「積雪が10cmを超える時は除雪してください」という張り紙がある。このリフトは真冬も営業しているのだと驚く。真冬にこのリフトに乗って砂丘へ行く人がいるのだろうか。

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 鳥取砂丘駅に到着した。リフトから降り、建物から出ると目の前に砂丘が広がっていた。かなり遠くに高い丘が見え、点のようになった人影がたくさん見えた。その丘に向かってたくさんの人が歩いていた。旅人も丘に向かって歩き始めた。砂は締まり、それほど歩きにくくはなかった。15分ほど歩いてようやく高い丘に到着した。

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 丘の下には美しい日本海が広がっていた。その日本海から強烈な風が吹きつけていた。風かなければのんびり砂丘に寝転んでみたいのだが、あきらめて早々に引き返した。時刻が遅くて、名物のラクダも馬も見ることが出来なかった。「リフトの営業が終わります。急いでください」リフト乗り場の人が呼んでいる。砂丘を走り、最終のリフトに乗った。行きに感じた寒風が、心地よい風に変わっていた。

 小さな民宿の玄関を開けて、旅人は建物の中へ入って行った。入口には古ぼけた家具が並び、その奥に食堂があった。そこに中年の女性が座っていた。ここのお上さんらしい。「今晩は。1人なのですが、今日はここへ泊れるでしょうか」旅人はお上さんに声を掛けた。「1人かね。どうかな」お上さんは、「少し待ってくれ」と、言って調理場へ入って行った。

 ここは、鳥取砂丘のすぐ近くにある「浜田園」という少々くたびれた看板の掛かった民宿の玄関である。砂丘の見学を終えた旅人は、今晩の宿をこの辺りで見つけることにしたのだ。そして、砂丘の土産物屋でこの辺りの民宿を紹介してもらったのだ。紹介してもらったといっても地図を渡されただけなのだが、その地図を見てここへやって来たのだ。今日は3連休第一目の土曜日である。「なかなか宿は見つかりませんよ」と土産物屋の親父さんは忠告してくれた。果たして宿は空いているのだろうか。

 ドアを開けると、入口の通路に物がたくさん並んでいた。その奥に食堂があり、お上さんらしい人が座っていた。「今晩泊れますか。1人なのですが」と旅人は声を掛けた。お上さんは、少し考えている様子だった。「どこから来たの」と聞かれた。「富山からです」と旅人が答えると、「富山の薬売り買い。空き部屋があるから泊めてあげるよ」とお上さんが笑いながら言った。やかで、奥から賄いのおばさんが出て来た。「部屋へ案内してあげて」とお上さんは、そのおばさんに指示をした。「どうぞ」おばさんは旅人を部屋へ案内してくれた。

 この民宿は通路が実に複雑にできていた。部屋へ行くまでに、階段を2度ほど上ったし、曲がりくねった廊下も歩いた。建て増し、建て増しでこういう複雑な形になってしまったのだろう。案内された部屋は、4畳半の畳の部屋だった。天井には洗濯物を干す紐が縦横に走っていた。今の旅人には、持って来いの民宿だった。この部屋へ案内される途中で洗濯機も見つけていた。

 「あそこの洗濯機を使っていいですか」とおばさんに言うと、「それじゃあ使い方を教えてあげましょう」と洗濯機の所で、使い方を親切に教えてくれた。旅人の最大の目的は達成できそうである。4日分の下着と靴下とズボンを1本洗濯機に放り込み、洗剤をたっぷり入れてスイッチをひねった。後は機械が自動的に洗濯してくれるのを待つのである。

 時刻は午後5時半を過ぎていた。食堂へ行ってビールでも飲むことにした。食堂には先客が1人いて、酒を飲みながらお上さんと話していた。ビールを注文した。テレビは大相撲を中継していた。今場所は、朝青龍と栃東が頑張っていた。今日は、栃東は魁皇と、朝青龍が千代大海と対戦する。共に敗れれば3敗で千代大海にも優勝のチャンスがめぐってくる。大詰めの一番がある。旅をしている間も、旅人は、相撲は欠かさずラジオで聞いていた。毎朝の体操には四股を踏んでいるくらいだから、旅人は、根っから相撲が好きなのだ。ビール飲みながら相撲中継に見入っていた。栃東と魁皇の一番は、栃東が魁皇を一気に押出した。魁皇は立会いに迷いがあったように見えた。続いて、朝青龍と千代大海は、朝青龍のスピードが勝り、千代大海を力任せに押しつぶしたという内容だった。朝青龍の負けん気の強さが今日も現れていた。明日の千秋楽が楽しみである。

 「お客さん、相撲がよほど好きみたいですね」飲んでいた親父さんが声を掛けて来た。「ええ。今場所の優勝が決まりそうだから力が入ります」と旅人は答えた。「旅の人かい」と親父さんが言った。「いいえ、この人、富山の薬売りですよ」とお上さんが言った。「富山の薬売りじゃあありませんよ」旅人は否定した。「富山から来たから、てっきり富山の薬売りかと思ったよ。ハッハッハッハ」とお上さんは大声で笑った。気さくなお上さんだ。「夕飯を出してもいいわね。」お上さんは調理場へ入って行った。

 「旅をしているとはうらやましい」酒を飲んでいた親父さんが言った。「絵を描きながら九州まで行こうかなと思ってあちこち放浪しているのです」旅人はそう答えた。「絵を描きながらとは面白い。私もやってみたいなあ」親父さんは笑っていた。「親父さんは旅に行かないのですか」と聞いた。「行きたいのは山々だけど、上さんの看病で行けないよ」親父さんは苦しそうな表情で答えた。

 「ここも、町村合併が進んでいるのですか」旅人は話題を変えた。「ここは福部村といって鳥取県に三つしかない村の一つ。人口は1600人くらいかな。すぐ隣の鳥取市と合併する話が進んでいるよ。合併しても何もいいことないと思うけど、今の村長は合併に乗り気でね」と親父さんは言った。「鳥取砂丘は鳥取市にあるとばかり思っていたのですが、そうじゃあないのですね」と旅人が質問すると、「リフトのあった所は福部村だよ。リフトか着いたところは鳥取市。砂丘は福部村と鳥取市にまたがっているんだよ。だから、観光客からの利益も両方にまたがっているという訳だね」と親父さんが説明してくれた。

 そこへ、食事を運んで来たお上さんも加わり、賑やかになった。「この辺りも今では寂れてしまったけれど、バイパスが出来る前は、この前の道は国道9号線だったのよ。その頃はお客さんも多くてね。ここで食堂をやっていて、そのうちに旅館もやるようになり、旅館もだんだん大きくしたの」食堂の壁には、当時をしのばせる賞状や置物、額などが所狭しと貼ってあった。「それが、バイパスができて、車が走らなくなり、観光客も少なくなり、何とか民宿だけは続けているというわけ。工事関係者とか出張の人とか結構利用してくれるから、やって行けてるのかな。今日は土曜日だから、薬屋さんは泊れたみたいだね」とお上さんが笑った。バイパスが出来るということは、町の発展を一変させるのだということを認識した。旅人の住む細入村でも国道のバイパス工事が始まっている。完成すれば村が一変するのではないだろうか。

 酒を飲んでいた親父さんは、娘さんが来るというので帰って行った。そこへ作業服を着た4人の若者が入ってきた。仕事から帰って来たのだ。酒を飲んでワイワイ話をしながら食事をするのかと思っていたのだが、彼等は黙々と食事を始めた。そして、あっという間に部屋へ引き上げて行ったのだ。今の若者たちはこんなのかと驚いた。旅人も食事を終わり、部屋へ引き上げることにした。帰りに洗濯機をのぞくと、洗濯がきちんと終了していた。部屋へ帰り、天井の綱に洗濯物を干した。今日は洗濯物を見ながら寝ることになる。明日までに乾くのだろうか。それが少し心配だ。しかし、部屋に充満したタバコの臭いには参る。今夜はタバコの臭いに悩まされそうだ。




[ 2012/12/01 05:48 ] ふらり きままに | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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