水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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「JR北海道フリーきっぷ」で行く「道東」冬の旅 6

第5日 2月18日(月) 網走~襟裳岬 
 午前4時前に目が覚めたが、もうひと眠りできそうなので、目を瞑ったのがいけなかった。次に目が覚めたのは6時だった。6時にタクシーを呼んでいるのだ。急がないと列車に乗り遅れてしまう。寝ぼけ眼で、着替えを済ませ、リュックを背負ってフロントへ走って行った。フロントは真っ暗だった。旅館の人はだれも起きていないようだ。ホテルならルームサービスで起こしてくれるのだが、旅館ではそういうサービスをしている所は少ない。そこへ、「ガラガラ」と入口の戸が開いて、タクシーの運転手が入って来た。「いやあ、6時だと聞いていてのですが、旅館の人は起きていないし、お客さんも出て来ないし、困っていたのです。少し遅れていますが、列車の時間には十分間に合います」と運転手は言った。旅先で、今日のように寝過ごしたのは初めてのことだった。「すいませんでした」と運転手に謝ってタクシーに乗り込んだ。

 タクシーは、雪が舞う国道を走って行った。「今日は大荒れの天気だということです。お客さんはどちらへ行くのですか」とタクシーの運転手が言った。「今日は、襟裳岬まで行く予定です。長旅になりそうですが、出だしからこれでは、いけませんね」と私は苦笑していた。タクシーは5分ほどで網走駅へ到着した。まだ時刻は6時15分。発車まで十分に間に合った。駅のトイレで洗面を終え、構内にあるキオスクの立ち食い蕎麦を食べ、列車に乗車した。

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 6時42分網走発「釧路行」普通列車は定刻通り発車した。1両編成の車内は結構人が乗っていた。釧網本線は網走と釧路を結んでいる。網走からオホーツク海岸を走り、知床斜里から道東の内陸部へ向かい、屈斜路湖、摩周湖の近くを通り、釧路湿原を抜けて釧路へ至っている。距離にして約170km。3時間半で結んでいるのだから列車はのんびり走って行くことになる。しばらくしてオホーツク海が見えて来た。流氷は昨日と同じように遥か沖合いに見えていた。網走から知床斜里までの海岸の風景はもう何度も見ていた。しかし、見飽きることはなかった。オホーツク海に浮ぶ流氷を見ながらのんびり旅ができるこの列車に、また乗りたいと思った。私も網走にハマリそうだ。
 
 知床斜里を過ぎ、車窓は山の風景に変わった。雪が激しく降り出し、この先列車が止まりはしないか心配になって来たが、列車は遅れもなく順調に走って行った。川湯温泉駅でたくさんの人が乗車して来た。地図で調べると、ここには温泉がいくつもあり、摩周湖や屈斜路湖へバスも出ていた。乗車して来た婦人客が近くに座って大声で話し始めた。「三重から北海道へ来ました。宿の人に親切にしてもらって、昨日は屈斜路湖が見える美幌峠に上りました。本当に素晴らしい景色でした」と感激した話が聞こえて来た。冬の美しい景色が目に浮ぶようだった。摩周駅でさらにたくさんの人が乗車して満員になった。雪は相変らず激しく降り続いているが、列車は順調に走って行った。

 標茶駅を過ぎ、釧路まであと1時間。この辺りから列車は釧路湿原の中を走って行く。「茅沼」という小さな駅に停まった。釧路湿原の中にある駅のようだ。駅前に「タンチョウヅルの来る駅」という案内が立っている。タンチョウヅルにこの駅で会えるかと思った。その時、向いの座席の婦人が「あれ、あそこにタンチョウがいるよ。見てよ、見てよ」と大声を出した。雪が降る原野の中に頭が赤い2羽のツルが立っていた。その姿が見えたのは一瞬だったが、心に強く焼き付いた。前から見たいと思っていたタンチョウヅルの姿が見られて満足だった。

 10時過ぎ列車は釧路駅へ到着した。釧路も雪が激しく降っていた。ここで列車を乗り換え、帯広へ行く予定だ。11時16分発「スーパーおおぞら6号」の指定席を「みどりの窓口」で手に入れた。本当に「北海道フリーきっぷ」は便利な切符だ。時間があるので、少し構内をブラブラし、構内にある喫茶店でコーヒーを飲んだ。少し余裕を持って改札口へ行くと、たくさんの人が集まっている。「何だろう」と思って聞くと、「今からSLが発車するのです」とおばさんが教えてくれた。時刻表に「11時00分発SL冬の湿原号標茶行」と表示されていた。時間に余裕があるので、SL機関車を見に行くことにした。 

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 SL機関車は3番ホームに停車していた。4両の豪華な客車が連結されていて、たくさんの人が乗車していた。ホームを歩いて機関車の所まで行くと、機関車に乗って記念撮影をする人が列を作っていた。

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 降りしきる雪の中に真っ黒なSL機関車が黒い煙を吐いている姿は、迫力満点だった。白と黒の景色の中に、機関車の先頭に取り付けられた「SL冬の湿原号」の赤いプレートが光っていた。私はしばらくそのファンタジックな景色に見とれていた。突然「ポー」という気笛が辺りに響き渡った。

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 やがて、SL機関車は、黒い煙と水蒸気を激しく吐きながら、ゆっくり動き出した。私は、映画の1シーンを見ているような気持ちで機関車を見送っていた。

 11時16分「スーパーおおぞら6号札幌行」は釧路駅を発車した。雪は相変らず激しく降っていた。これだけ雪が降っているのに、列車はほとんど遅れもなく順調に走っている。北海道の鉄道は、雪には強いのだと思った。

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 12時47分列車は帯広駅に到着した。帯広駅でバスに乗り換えて広尾町まで行くのだ。バス乗場は駅のすぐ近くにあった。バスの発車は13時30分。広尾までの切符は1830円だった。時間が少しあるので、帯広駅構内にある商店街をブラブラする。100円ショップがある。「こんなものが100円で買えるの」と驚くような品物が並んでいた。スケッチブックを買った。また、リュックが少し重くなってしまった。

 コンビニでサンドイッチを買い、バス停へ行った。10人ほどがバスを待っていた。しばらくして赤い線の入った十勝バス「広尾行」がやって来たので乗車した。13時30分、バスは定刻通り発車した。

 相変らず雪が激しく降り続き、国道にも雪が積もり出した。時々、大きな除雪車が雪を豪快に跳ね飛ばして行く姿を見るようになった。広尾はまだここから50kmほど先にある町だ。しかも、目的地の襟裳岬は、広尾からさらにバスを乗り継いで50kmほど先にある町なのだ。無事襟裳岬へ到着できるのか、だんだん不安になって来た。広尾からのバスに乗れることを願いながら窓の外の景色を見つめていた。

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 バスは予定より15分遅れて、16時少し前に広尾駅に到着した。広尾駅は廃線になった国鉄広尾線(帯広~広尾)の終着駅で当時の駅舎がそのまま保存されている。改札口や時計、時刻表などは、まだ列車が走っているという空気を感じさせる。廃線になった時の記念写真や新聞記事、使われていた品々も展示されていて小さな博物館になっていた。

 雪は少し小降りになってきた。乗り継ぐJRバスも動いているようだ。待ち時間が1時間あるので、駅近くの大型スーパーの中にある喫茶店でコーヒーを飲んだ。結構賑わっていた。帯広から車で2時間近くかかる広尾町だが、大型店があるのだから人口が結構多いのだろうと思った。

 17時00分広尾駅発「様似行」JRバスに「北海道フリーきっぷ」で乗車した。乗客は4人だった。広尾から襟裳岬までの国道は黄金道路と呼ばれている。断崖の海岸に道路を付けるのに湯水の用にお金を注ぎ込んだことからその名前が付いたのだという。その国道をバスは走って行った。大きな波が堤防に打ち寄せている。太平洋はかなり荒れているようだ。「海が荒れると、昆布がたくさん流れ着く。昆布拾いをする漁師には、悪天候は最大の味方だよ」と、去年、襟裳岬の浜で老人が話していた。明日は、見たいと思っている「昆布拾いをする漁師たちの姿」が見られそうだと思った。

 18時過ぎ、バスは襟裳観光ホテル前に到着した。ホテルのフロントでお上さんから鍵をもらった。「去年も冬に来たのですが」と言ったが、お上さんは覚えていなかった。2階の部屋へ行った。去年は洋室に案内されたが、今年は和室だった。テレビを付けると、「北海道の道東地方は大雪で、北見のふるさと銀河線では雪のため列車が脱線事故を起こして現在不通です。釧網本線も列車が大幅に遅れています」とアナウンサーが話していた。今日、網走から襟裳岬まで来ることができたのは、本当に幸運だったのだと思った。

 風呂へ入った後、食堂へ行った。広い食堂にある一つのテーブルに、料理が並べてあった。どうやら客は私一人のようだった。ビールを注文し、料理を食べ始めた。お上さんは、ビールを運んできたが、すぐ奥の部屋へ行ってしまった。カニやウニもあり、美味しい料理なのだろうが、広い食堂で、黙々と一人だけで食べる料理は美味しくないものだ。料理には雰囲気も重要なのだ。そういえば、去年は、お上さんが部屋へ料理を運んでくれたことを思い出した。今年はサービスが低下したようだ。

 食事を終わり部屋へ戻ると、ヒューヒューと風の音が聞こえて来た。窓を開けると、強烈な風が吹いていた。襟裳岬では冬には、このくらいの風は普通に吹いているそうだ。暗くなった海岸に、大きな波が押し寄せていた。明日の朝、あの海岸で昆布を拾う漁師の姿が見られるのだろう。遠くにある丘の上では襟裳岬灯台の光がくるくる回っていた。襟裳岬の夜は激しい風の音の中で更けて行った。



[ 2013/01/15 06:42 ] ふらり きままに | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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