第7日 2月20日(水) 苫小牧~札幌~名古屋 午前6時過ぎ起床。洗面を終え、荷物を整理した。リュックは出発した時よりも、各地で集めた資料や本などがどんどん増え、かなり重くなっていた。。今日はこれを担いで歩かなくてはいけないのかと思うといやになる。
朝食の時間になったので、1階のラウンジへ行った。注文していた和食を食べた。食べ終わり、コーヒーはないかとウェイトレスに聞くと、「コーヒーは和食のメニューには入っていません。有料になりますが、よろしいでしょうか」と聞き返された。何ということかと驚きながらも、しぶしぶコーヒーを注文した。コーヒーくらいサービスできないのだろうか。「和食にはお茶が合っています。洋食にはコーヒーが合っています。和食にコーヒーは可笑しいです」というのは、だれが決めたのか。「食後のコーヒーではいけないのか」全く不合理だと思った。部屋へ帰り、「ホテルの感想をどうぞ」というメモがあったので、そのことをしっかり書いておいた。
午前8時過ぎにホテルを出発し苫小牧駅ヘ。「みどりの窓口」でいつものように指定席券を手に入れ、9時08分苫小牧発「すずらん3号札幌行」に乗車した。この列車はほとんどが自由席で、指定席は2分の1車両だけだった。札幌に近づくに連れて雪が多くなった。9時58分列車は札幌駅に到着した。

駅のコインロッカーにリュックを預け、札幌市内見物に出掛けた。

札幌時計台の周辺はたくさんの観光客で賑わっていた。明治時代に建てられた洋風建築として有名な旧永山武四郎邸は深い雪に囲まれていた。その近くにある札幌ビール「サッポロファクトリー」は、美味しいビールを期待していたのが、あいにく休館日だった。

雪まつりの終わった大通り公園には、巨大な雪の山があちらこちらに残されていた。何組もの観光客がその雪山に上って記念撮影をしていた。大通り公園の外れにある札幌資料館で、「おおば比呂司記念館」を鑑賞した。ここを訪れるのは2度目だ。以前はまだ絵にあまり興味がなかった時だった。今回は、おおば比呂司氏の水彩画を見て、着色や構図などたいへん勉強になった。記念に何枚か絵葉書を買った。私もこのような絵が描けるようになりたいと思った。
北海道立近代美術館にも行った。「砂田友治展」を開催していた。北海道で生まれ、北海道を描き続けた作家の生涯を紹介する作品展だった。「北海の男たち」という作品は、強烈な赤を使って海で働く男たちを描いていた。画面からほとばしる強烈なエネルギーに圧倒された。彼の晩年の作品は、色も穏やかになり、テーマも天使とか、キリストとか、宗教的なものに変わっていた。絵がその人の一生をそのまま表現しているように感じた。

昼食は「すすきの」のラーメン横丁で食べた。ここへは何度も来ているが、全く客のいない店と、行列のできている店があることだ。それがいつも同じ店ではなく、変化している所が不思議なところだ。私は、少し客のいる「おやじの店」で食べた。味は特別美味しいとは感じなかった。今は全国に美味しいラーメン屋でき、ここだけが特別ということでなくなったのかも知れないと思った。

すすきの駅から市電に乗った。札幌市内をぐるりと巡り、西4丁目まで走っている。座り心地のあまりよくない座席に座ってのんびり札幌市内を見ていた。運賃は180円だった。
もうすぐ時刻は3時。そろそろ千歳空港へ移動しなくてはいけない。札幌駅へ戻り、リュックを背負ってホームへ出た。快速「エアーポート」新千歳空港行は超満員だった。午後4時過ぎ、千歳空港へ到着した。搭乗手続きを済ませ、土産店を歩く。土産店が並ぶ通りはたくさんの人でごった返していた。
午後6時、予定より遅れて、私の乗ったジェット機は名古屋向けて千歳空港を飛び立った。暗くなった大地には、函館の美しい夜景が箱庭のように見えていた。「また、来年の冬もこの北海道を旅しているのだろう」北海道にはまってしまった男は、そう思った。 (完)