水彩画で綴る  細入村の気ままな旅人 旅日記

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神通峡かいわいの昔ばなし  その11 布尻の長者屋敷   富山市布尻

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その11  布尻の長者屋敷   富山市布尻

布尻(ぬのしり)の南、下夕平(したたいら)と いう所に、「ふるみやあと」と よばれる ところがある。西孫左衛門(にしまござえもん)と いう者の やしきあとで、おくまんちょうじゃで あったらしい。
しゅういに ほりを めぐらし、東の方に お宮をつくり、東ざしきの 戸を 開ければ、いながらにして朝の お日さまとともに、お宮もうでが できるしくみに なっていたという。
今の 布尻神社(ぬのしりじんじゃ)は、この長者の やしきで あったのを、安政(あんせい)年間に げんざいちに うつしたものだと いうことである。
この長者の家に、ふつうの馬と、目の色のちがった「ジョウン馬」と いう馬も 五、六頭 かってあったという。今なお、町長(まちなが)との さかいの谷を、「ジョウメン谷」といい、ほりの あったところを、「ほりの田」と いっている。
この やしきあとに ついては、こんな話も のこっている。
布尻の とうふ屋で、しかも、何代目かの あととりむすこに 文右衛門(ぶんえもん)と いうものがいた。身分のよい家の このむすこは、はたらくことが 大きらいで、朝から 酒ばかり 飲んでいた。
家の人は、「これでは どうにも ならんぬ」と こまりはて、田んぼを 見回る 仕事につかせ、ここに家をたてて、よめさんを 見つけて けっこんさせた。
しかし、文右衛門は、いっこうに はたらこうとせず、目の回るように いそがしい 五月のころにも、よめさんには おめかしをさせ、自分は 酒を飲んで、歌え おどれの 生活を 続けていた。
この文右衛門が、ある夜のこと、たいへん よっぱらって うたたねを したそうだ。その時の ゆめまくらに、ぼんやりと あらわれたのが 白衣白髪(はくいはくはつ)の老人。  
その老人が、「千杯(せんばい)のうるしと、千両(せんりょう)の小判(こばん)と、この世で 一番の 黄金(おうごん)の鳥が、朝日と夕日に かがやく所、三つ葉うつぎの 下にあるぞ。お前一人で来て さがすがよい。けっして 人には言うな」と つげた。
文右衛門は、パッと はねおきて、「これだ。長者やしきの ひほうと つたえられているのは…」とばかり、くわを つかんで 飛び出した。しかし、夜明けには、まだ 早い 寅の刻(とらのこく 今の午前四時ごろ)。あたりは まだ まっくらだった。
文右衛門は、根が おくびょう者だから、引き返して、よめさんを つれて 行くことにした。そして、このあたりだろうと 思われる所へ やって来た。
「あったぞ。三つ葉ウツギが あったぞ!」 一かぶの 三つ葉ウツギを 見つけた 文右衛門と よめさんは、くるったように 土を ほり返しては すすみ、 ほり返しては すすんだ。そして、ようやくにして ほりあてたのは、えたいの 知れないほどの 大きな 岩ばんだった。
文右衛門と よめさんは、ついに せいも こんも つきはてて、そこへ へたばって しまった。そして、空を見上げると、すっかり 晴れ上がった 東の空から、すがすがしい 太陽が のぼっていたのだった。
文右衛門は、その時に なって やっと気づいたのだ。それは、「お前一人で…」との おつげに、よめさんを つれてきた ことだった。
そして、文右衛門は、もう一つ、大事なことに 気づいたのだ。それは、「おれも、はたらけるのだ」と いうことであった。文右衛門は、「これからは しんけんに はたらこう」と けっしんし、その足で、田んぼの
あぜ道作りに 向かった。 
朝めし前に、いっしんふらんに ふり上げる くわのかるさと 心地よさ。そして、文右衛門が 生まれて はじめて あじわったのが、自分の あせの あじだった。
その時である。くわさきに ガサッと 手ごたえが あった。と、同時に、バタバタバタと 金色をした わけの わからない鳥が 神通川(じんずうがわ)をわたって、楡原(にれはら)村の 竹やぶの方へ 飛んでいった。そして、その鳥が いたあとには、いつ作られたのか 分からない古いつぼがあったそうだ。
民話出典「大沢野町誌」からの再話
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プロフィール

細入村の気ままな旅人

Author:細入村の気ままな旅人
富山市(旧細入村)在住。
全国あちこち旅をしながら、水彩画を描いている。
旅人の水彩画は、楡原郵便局・天湖森・猪谷駅前の森下友蜂堂・名古屋市南区「笠寺観音商店街」に常設展示している。
2008年から2012年まで、とやまシティFM「ふらり気ままに」で、旅人の旅日記を紹介した。

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